アニメランナー - ANIMERUNNER

No.07 制作会社が若手アニメーターに示せる展望とは

堀川:先ほどと全然視点が違うんですが、4クールもの(マーチャンもの)と、1クールもの(アニメ自体の品質で売っていくもの)を同じ制作会社で両立しているのが一番いい、というお話がありましたが、それが出来ている会社が実はあまりない。先ほどもお話したように、30歳ぐらいまでの若くて収入が少ないアニメーターが、僕らの世代のように「好きなもの(仕事)だけをやって食ってきた」という事だけでは、実はその後の世代のアニメーターに対して未来を示せていない、ということが分かりました。40歳、50歳を超えたらどうやって仕事を続けていくのかが見えない。その年齢を超えてからも第一線で活躍しているアニメーターはグッと減ると思います。出来高の収入だけでは苦しいし、体力的、視力的な問題もあります。絵柄、技術が流行には乗れなくもなる。そうなってきた場合にアニメーション制作に携わる道は3つあると思うんですね。一つは作品において、制作現場において、企業において、自分の付加価値を上げることで出来高以上に必要とされる人間になること。もう一つは、アニメーション関連事業に関わりながら、アニメーターとは別の道を選択すること。もう一つは、流行や緻密なデザインではなく、「動かす」基礎があれば物量をこなせるキッズ向けのアニメーション作品に携わる。これらの方法が考えられるのですが、どれもアニメーターの個人的な努力だけでなんとかなるものではないんですね。企業が組織的に取り組まなければならないものだと思います。それに対して、アニメーターも制作現場や企業に対してどんな貢献ができるかを考えて、お互いに長期的で良好な依存関係、信頼関係が構築できるかだと思います。

さっきおっしゃったようなマーチャンもので、子供たち、これからの視聴者層を育てるアニメを、僕は作りたいなと思っているんです。今風の絵が描けなくなっても、「動かす」という事について、ちゃんと基礎体力があってきちんと仕事ができる人たちに対して、キッズ向けの長期作品が制作可能なラインを一本作ってあげないと、その人たちが使い捨てみたいになってしまう。今はうちの平均年齢もまだ20代ですが、この先はそれまで貢献してくれた40代を超える人たちのことも、企業として考えなければいけないんじゃないかと思っています。

もともと僕自身が【トムとジェリー】みたいな作品が好きだからアニメ制作の仕事を始めたんですが、今はそういうものを作るチャンスがなかなかありません。キッズ向けというとどうしても「低予算で動かない紙芝居でいいでしょ」というところがあるんですが、本来の子供向けのアニメは動きだけで喜ばせるような面白さを追求できると思っています。そうすると、それを1クールものに慣れているスタッフで作るのはすごく難しい。1クールって、最後はいつもスケジュールに追われて逃げ切りですから。4クールものを作ろうと思ったらもっと安定した戦力がいるので、今のうちではまだまだ作れないなあと思っていますが、そこは目指したいと思っています。若手はアニメーションファンに向けた1クールの作品を作って、ベテランはアニメーション本来の面白さを活かした、シンプルなキッズ向けの作品にシフトしていけたらいい。そういったラインが一本準備できると、これから入ってくる若手に「自分もいずれ今流行りの絵が描けなくなっても、長くアニメーターとして描いていけるんだ」というモデルを企業として見せてあげられるんじゃないかなと思うんです。

安田:問題はそういう作品のアニメ化権をどうやって手に入れるかですよね。

堀川:そうですね。

安田 猛氏

プロフィール

株式会社KADOKAWAの常務取締役として実写、アニメ、ゲームなど映像系コンテンツを統括。また株式会社プロダクション・エースの代表取締役会長、株式会社ドコモ・アニメストア代表取締役社長のほか、株式会社角川大映スタジオ取締役、株式会社キャラアニ取締役、角川メディアハウス株式会社取締役、グロービジョン株式会社取締役などを兼任している

P.A.WORKS制作作品では『Another』(2012年)で企画、プロデューサー、『RDG レッドデータガール』(2013年)で企画、エグゼクティブ・プロデューサーを務める。