2005.03.05  
   
 
 
 
   
 

No.03 「とんと手が回らない」

堀川:手描きアニメーターが生き続けるための道、と云うことでお話しをしたいのですが。
井上:難しいですね、いや、難しくはないな。
堀川:まず、アニメーターの選手寿命を長くするための基礎体力ですが。
井上:もちろん心肺機能のことじやなくてね(笑)、アニメーターとしての基礎技術力みたいなことね。
堀川:基礎体力をつける前にフリーになる傾向がある。
井上:あー、そういう傾向は強いかな、そうですね、1つの会社に10年いるつてことはあんまり無くなってきてるよね。
堀川:フリーになると仕事を選ぶから作画傾向が偏るんですよね。
井上:そうね、俺もジュニオ(スタジオ・ジュニオ)にいた時に、わりと早い段階で好きな仕事を選べるようになってしまったんだよね。 26、27歳くらいに「アキラ」で初めて出向した。会社の仕事だから、やりたくなくても描かざるをえない状況にいる同期の人達もいたから自分はラツキーだったよね、今から思えば。当時はそれでも1つ1つ何をやってもそれなりにやりがいはあったし、描きたくないと思うものもあったけど‥・それほど‘オイシイ世界’を知らなかったって云うこともあるのね。描きたいものだけをやっている奴を横目で見てたわけじゃないから。そんなものだって、我慢をしているって云うことではなかった。振り返ってみれば、ずいふん自分の描きたいものとは違うものをやって、それは忍耐力をつける上でいい経験だったかな。今の子達よりは我慢強かったかもね(笑)。

井上:今、30歳は若手って印象があるね。俺が歳とったからかな。西尾君は「人狼」を何歳でやってたんだっけ?
堀川:制作中に30の誕生日を迎えたから‥・
井上:もう、バリバリ若手がね、やっと台頭してきたって感じたよね。人のこと言えないけど本当の意味で大人になるのも、アニメーターとして一人前になるのも、ちょっとずつ後ろにズレてきている気がする。
俺がこの仕事を始めたころの若手、「お、目だってきたな、活きがいいな。けっこうこいつ、スゴイ奴になるぞ」って感じるのは23、24だった気がするね。今、それくらいで芽を出している子はそんなにいないよね。
レベルが下がったわけではなくて、何か原因があると思う。俺が始めたころよりも色々やるべきことが増えてて、あっちもこっちもやらなきゃって言ってるうちに、どれもまだ到達できないでいるようなところがあるんじゃないかなぁ。
昔より上の方のレベルは上がっている気がするのね。いや、実は振り返って見ると、東映長編の充実していたころに比べると、そんなには進歩していないんだけど、たぶん20年くらい前のテレビアニメーションの技術で、新しい表現を開拓しなくても、やりたいことはだいたい過不足なく表現できてたように思うんです。それでも最近は表現の幅もすごく広がっているし、漫画映画時代にはなかったような表現がいっぱいある。特に「人狼」のような、20年前にあった技術ではなかなか表現しきれないものが出てきているでしょう? アニメーションの題材の幅が広がったこともあるしね、高いレベルの表現もどんどん出てきて、そういうものを見ちゃうと、あれもこれもあんなふうに出来なきゃって、視点が定まらないのかもしれないね。今の新人は流通している技術を習得するのも大変になってきている。ひと通り覚えるにもとんと手が回らないって云う意識があるのかもしれない。

No.04 「ずいぶん遠回りしたような」に続く


 
       
       
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