2005.03.11  
   
 
 
 
   
 

No.06 「同列で競争していた人達は何処へ?」

堀川:それ(物量をこなすこと)は基礎を学ぶ上で何かを頑張ればできるようになるって云うようなものなんですか?
井上:間近で見ているわけじゃないから、具体的に何が足りないって言葉では言えないけど、普通のレベルで考えてもやるべきだと思うんだよね。「井上さんは特殊なんですよ」って言われちゃうとそれまでなんだけど、決して俺は同世代の中で、それほど早かったわけでもないし、特別自分が技術的に高いとは思っていなかったんだよね。いつの間にか「アンタ、日本一だよ」なんて、―自分で言うと変だけど―言われたりするけれど、それはおかしい。自分が23、24歳のころに同列で競争していた人達は何処へ行ってしまったのか。 40歳を過ぎて、アニメーターとしてね、原画マンとして、俺と同じ位置にいる人が少なくなった。俺と同じくらいの力を持った人は何人もいたし、今もいると思う。何らかの事情がね、家庭があって、子供がいて、原画だけに専念していたら食べさせていけませんよ、なんて云う事情があるのかもしれないけど、確かに同世代のライバルは減って、寂しいと云うか、悲しいと云うか、そうあっちゃならないと思うんだよね。
堀川:つまり、馬力をつけるには同世代のライバルがいることが大切?
井上:あたりまえ。そうそう、すごく大切。やっぱりね、上の人がどんなに凄くても、目標にはなるけど、その、同世代って日標じゃないんだよね。競い合う仲間だね。その「競い合う」って云うのが一番大切かな。
堀川:目標となる人がいることが大切だとも
井上:この人のように描きたいと云う目標は大切ですよ。昨日(P.A.WORKSの動画マンに)聞いてね、なかなか具体的な名前が出ないじゃない。俺はそのことが不思議なんだ。今は1本の作品に参加する原画マンが多すぎて、(エンドテロップを見ても)どの人が上手いカットを描いた人なのか見つけづらいよね。それで、なかなか目標にしたい人を見つけられない。(ProductionI.Gで)井上塾をやって、そう云う情報が行き届いていないとは思った。 自分の好みに合う上手い人には、やっぱり目の前を走っていて欲しいんだよね。俺が原画になったころは森本晃司さん、梅津泰臣さん、なかむらたかしさんとか。俺とは全然違うタイプの作画をするんだけどね。当時の森本さんはバリバリ一原画マンとして冴えたシーンをいっぱい描いていた。今ほどオリジナリティーを発揮してはいなかったから、あくまで一原画マンとしてね。自分の中には全然無い、思いもしない発想で描く人と、自分に似た思考で自分と似たタイプだけど、自分よりも技術的に高い人、この2種類の憧れになる人が持てるといいと思うんだよね。ようするに、自分の好きな人だけ追っかけると、自分の都合のいいように都合のいいように、自分に無いものは全然求めないから、確かに‘スゴイ人’にはなっていくかもしれないけれど、オールマイティーさは無くなっていくような気もするから。でも好きなアニメーターすら具体的にわからないんだから、きっと目標になる人は見つけられていないんじやないかな。

No.07 「机蹴飛ばして地団駄踏んで」に続く


 
       
Copyright (C) 2004 PA works Corporation. All Rights Reserved