2005.03.14  
   
 
 
 
   
 

No.07 「机蹴飛ばして地団駄踏んで」

堀川:育成環境にお手本になる人がいることも大事だと思うんですよ。どんなペースでどれだけ、どんな手順で描いているかを見せてあげられるような。
井上:それも大事だよね。
堀川:近くで見ることができるのは大事なんです。うちが初めて動画マンを採用した時に、最初の目標動画枚数を月500枚にしたんですけど、先輩もいないので「月に500枚も描ける人がいるなら、どう描いているか見てみたい」って。
井上:そうだよ。見たことないんだから、言われたって『ウソだろう』って(笑)、困っちゃうもんね。
堀川:原画でもそう云うお手本になる人がいるといないとでは違うんですよね。「この人は才能が違うんだよ」って言われちゃうと終わっちやうけど。
井上:今ね、すぐそう言っちやうんですよ。まぁ、本心でそんなふうに言っているんじゃないと俺は信じたいけど、「いやぁ、あの人は特別なんですもん」、とか「あの人は才能があるから」って口で言うのは構わないけれど、内心は違ってて欲しいな。そうは言ってても家に帰ったら机蹴飛ばして、「チクショウ!どうしたらあんなに描けるんだ!!」ってふうに地団駄踏んでて欲しいんだけどね。そうでない限りまず伸びないね、数字も、技術も。
堀川:15年くらい前だと、テレビシリーズ月80カットをこなす‘できる原画マン’を目標にしていたと思うんですよ。
井上:俺らの時代だと、月半パート(約150カット)やって一人前と言われていたのね。「井上君遅いな、遅いな」ってずっと言われ続けて、せいぜい月100カット、20年くらい前のテレビでね。先輩の原画ってやっぱり簡単に描いてあるの。どこかで『それくらいの原画だったら確かに頑張れば半パートできるかもな』って内心思っていたけれど、でも、それでは満足できない。やっぱり、いっぱい原画を描いて豊かな動きにしたいなと思っていたからね。数字の上でも先輩に追いついて、クオリティーではその上を行きたい、と思っていたから、なかなかそれは両立できなかった。
最近の傾向を見ていると、クオリティーで勝っていれば、数字はそんなに気にしていないように見える。それがすごく気になるんだよね。競争するなら数字で並んでクオリティーで勝たなければ勝ったことにはならないから。スポーツのようにはっきりとした力関係みたいにはいかもしれないけれど、数字で並んでやっと同じ体格のクラス、そこでクオリティーで秀でたものが勝って前に出て行くって云う姿勢じゃないと。今はクオリティー主義みたいになって、クオリティーさえよければって。確かに磯君ほどの才能を見せられるならば、数字は伴っていなくても全然存在価値はあるかもしれないけれど、それはね、難しいですよ。



                   No.08 「でも、そこに甘んじるか」に続く



 
       
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