2005.03.21  
   
 
 
 
   
 

No.10 「解らないとしかいいようが無いな」

堀川:アニメーターが成長するための意識の持ち方ですが、各自が追求したい技術的なテーマを持ってね、自分はここが弱いけど、この人のこう云うところを盗みたい、とかね、常に吸収するためのアンテナを張っていた方がいいと思うんですよ。
井上:そうなんだよね。そうそうそうそうそう、そこがね。
堀川:そのテーマ、「それはあるだろ、オマエ!」って話で終わらないで、持つのがあたりまえなんだって云う‘社内環境’にある程度はしていきたい思うんですよ。
井上:う―ん。
堀川:考える‘社風’みたいな、考えないといられないようなヒリヒリした環境をね。
井上:本当は自然発生するもんなんだけどね、自分の中でね。
堀川:それをじっと待っていることには、僕の中でちょっと諦めがある。
井上:ああ、それは似たようなことを今(敏)さんがね、「結局何が問題かを教えてあげなきゃいけないようでは、もうダメだなぁ」って。問題意識は自分の中で持っているもんであって、疑問をもたせてあげるって云うのはちょっと難しいよって話をしてたんだけど、そうなのかもなぁ。
堀川:放っといても疑問を持つやつは持って、上手くなっていくやつはなる、じゃあもう大勢は変わらない。
井上:この状態はね。
堀川:天才やアニメ界のヒーローの出現を待っていてもしようがない。
井上:俺は言っておくけど、天才では絶対に無いですよ。特殊なことではない。俺みたいな人間はいっぱいいた。
堀川:それはいいことなんですけど、では、なぜそういう人が出てこなくなったのか。
井上:それは、解らない(笑)。
堀川:現場がもう育成する環境じゃなくなった
井上:う―ん、でも昔だって特に「育成する環境」って感じではなかったよ。
堀川:でも、フリーのアニメーター、腕を競う剣客みたいな人がいろんなところから集まって来たら、そういう技術論争が高まってもおかしくないですよね?
井上:う―ん、そうなんだよね。本当に解らないとしか言いようがないな。
堀川:昨日薦められたように、この作品は観るようにとか、この本は会社に置いておいて是非読むべきだとか、もしそう云う会社の環境作りでアニメーターがテーマを発見していくならやるべきだと思うんです。知識の吸収は置かれている環境で違ってくると思うんです。会社はその環境を作るところまではできる。クリエーターのテーマは教育して与えるものじゃないけど。
井上:作画のテーマを追及する思考も含めて才能だと言うのなら出現を待つしかないね。
堀川:レベルの高いところではそうかもしれないけれど、原画職人として食べていけるようになるくらいまでは訓練でなんとかなると思うんですよ。その上の才能は持って生まれたものとして。みんな疑問を持つことはあると思うんです。疑問に思ったことがあっても『あれ、おもしろいな、どうなってるんだろうな‥・』で大抵終わっちゃう。追求までいかない。それでですね、先日作画のミーティングに顔を出して動画マンに話しをしたんです。今まで毎週「鋼の錬金術師」の放映を見で‘作画に限定して’討論してたんですが、放映が終わってしまったので、これからは週1回自分がみんなに観て欲しいDVDを持ち寄って討論することにしたらしいんです。そこで、ただみんなで観るんじゃなく、自分がもってきたDVDで、人に観て欲しい作画のポイントを人前で語ってみろって言ったんです。人前で語るとなると、「おもしろいけど、どうなってるのかな」じゃ済まなくなる。一度頭の中で整理して答えを出して語らなきやいけない。例えば、昨日の「どうぶつ宝島」(1971年劇場公開作品)を観て、なぜ自分はこのシーンの原画を宮崎駿さんが担当したと考えたのか、他のシーンの原画とどこが違うのか、語るためにはいっしょうけんめい観て考えなきゃいけなくなる。知識として宮崎さんがどこをやったか知っているだけじゃ語れないんです。それで人前で語らせることにしたんですよ。
井上:そうだね、そういうことを試したことはないけれど、悪いことではないと思うしマイナスにはならないと思うな。



                 No.11 「行き詰まりがテーマを生む」に続く


 
       
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