2005.03.23  
   
 
 
 
   
 

No.11 「行き詰まりがテーマを生む」

堀川:参考に井上さんが求めてきた作画テーマの変遷を語ることはできますか?
井上:具体的にはなかなかすぐには思い出せないけれど、その時々でね、行き詰まりを感じたこと、それを突破するために―テーマを探すんじやないよね―行き詰まりがテーマを生む。
堀川:例えば川面(恒介:P.A. WORKSの原画マン)は攻殻の原画で「描けないんです」って言うけど、「これに行き詰まっているんです」って云うようなものはあるの?
井上:それを言葉にはしづらいんじゃないかな。
川面:僕は結論は出ているんですよ。画力が足りない。
井上:画力に対する行き詰まりっていうのは切実なことなんだよね、実は。描きたい絵にならないって云うのは。でも、そう感じていれば上手くなるって云うのは変な根性論みたいだけど、自分の絵に不満がないと。これじゃないんだよな、うまく描けないなって云う気持ちがあるのは大事だよね。そこから先、それをどう解決するかは難しいけど、例えば自分が描きたいと思っている絵の種類でね、誰か別の‘あ、これが自分の描きたかった絵なんだ’って云うのを描いている人を見つけるとかね、‘あ、このポーズを描きたかったんだ’って云うのを見ることがやっぱり解決の糸口。‘あ、そこをそうやって描けばうまく見えるんだな’とか、ごまかし方を覚えるのはよくないんだけどね(笑)。
 でもね、‘その絵を無理に描かなくても、その前後を上手く押さえてやると、ほぼ描きたかった動きになるな’とか、ま、それは職業だから凌ぐ上での1つのテクニックでもあるんだよ。描きにくいポーズを描くことが目標じやないからね。自分の描きたい動きにさえなっていればいいわけ。あんまりバカ正直にその絵が描けないためにいつまでも完成しない方がマズイから。アニメーションはイラストじゃないからね、動いた結果自分の描きたかった‘動き’になっていればいいから。上手い人は難しいアングルを達者に描くじゃない、どうしてもそう云うのに憧れて、そのアングルをちゃんとあのように描かなきゃいけないんだと思ってしまうと、なかなか、そこはデッサン力の差がどうしても出てしまうから。そこを真向勝負しなくても実は同じような結果がアニメーションでは出たりするからね。難しい瞬間の絵を絶対描かなきやいけないわけじやないの。デッサンカでガチンコ勝負でもないんだよ。本当に動きのコントロールが上手い人がいて、絵はそんなに上手くないんだけど、効果としては抜群にすばらしい表現をする人もいるから。デッサン力では俺だって真向勝負したら沖浦 (啓之)君にはかなわないかもしれないけれど、そんなに引けを取っているつもりはないから、そこはね、自分の画力に応じたこなしかたを覚えていくと、そんなに‘動き’の効果としては変わらないものを作れるのがアニメーションの特徴でもある。明日までに上げなきゃいけない土壇場で、難しいアングル1枚で止まっている場合じゃないって時にはごまかしてでも凌がなきやだめだよね。でも、そうじやない時にはなるべく真向勝負する。その描きたい絵を何が何でも描くんだって云う意地も大切で、デッサン力はその過程で培われるところもあるから、及ばないまでも絶対その過程で力はつくから。描けない絵にもがき苦しむところが無いようでは上手くはならないよ。若いうちは何が何でも上手くなりたいって気持ちが画力を上げるんですよ。同時に上手い往なし方を覚えていかないとだめだって云うか、答えになっていないね(笑)。でも、どっちも本当のことなんだよ。



                No.12 「ちょっと足りなくてありがとう」に続く


 
       
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