2005.03.30  
   
 
 
 
   
 

No.14 「特別個性を発揮できる仕事じゃない?」

堀川:昨日井上さんが、「自分のパートで‘我’が出ないようにやっている」と言われたこと、「個性は隠せないけれども、見ていてそのパートで引っかからないようにすることを目指している」って。そう云う意識は少数派だと思うんですよ。
井上:まぁ俺の場合、出したい‘我’がそれほど無いのは幸いしたと思うけど、最近ね、個性的でないと駄目だみたいな風潮がどこかあると思うんだよ。私も自分の個性を出さなきゃ、なんて決めてしまうとなかなか出せるものじゃないし、それが邪魔になるから。個性なんてね、長年やっていれば無理に出そうなんて思わなくても滲み出てしまうもんなの。それが個性だから。その個性が出せないでいるなんて云うフラストレーションを持たない方がいいよって云うつもりだったんだよ。それは僕の懸念があるからね。特に美大に行ったような子達は―どんどん入ってきて欲しいんだけれど―『自分なりの何かを表現しなきゃ』、みたいなね、ずっとそう云う教育を受けてきていると意識としてあると思う。アニメーションをやっても個性的な作画とか、個性的な動きとか、何か発明しなきゃみたいな意識に囚われてしまって、それがやっぱり足かせになる気がして。アニメーターは特別個性が発揮できる仕事じゃないから。取り立ててね。すぐに個性を発揮したいなんて思っていると、たぶん動画やっている間なんてもう微塵も出せないわけじゃない。そんなことに焦らなくてもいいよって云うつもりだったの。10年も原画やれば―そんなにかからないね―多少なりとも自分の個性って出てくるもんだよ。

堀川:アニメーター受けするキャラクターデザインってあるじゃないですか。今は原画マンを集めるのに非常に苦労するから、僕は作品を受けるときにこのデザインならどれくらいアニメーターを集められるんだろうかって考えちゃうんですよね。
井上:ここまで人手不足になってくるとアニメーターもいっぱい依頼がくるから、どちらかと言われれば描きたい絵柄を取るからね。アニメーターウケするって云うのは(発注側にとって)大事なポイントにはなっているね。
堀川:アニメ雑誌なんかを見たときに、そのアニメーター受けする絵柄と商品としてのデザインには正直ギャップを感じますよね。‘これを振らなきゃならんのか(驚)’って。
井上:それは経営者があまり考えなくても。商品として購買層から望まれていることは現場に要求していかないと駄目だろうし、現場はそれを受け入れるべきだと思うよ。それはみんな解って入ってきているだろうし、そんなに危惧しなくてもいいことじゃないの?むしろそこにやりたいことを忍ばせるって云うのは楽しみでもあるし、そこすら楽しみって云うかさ、そう云う仕事だからね。
堀川:『(こんな人が目の前に)!!』それを自分から受け入れるよう意識をコントロールすることが、アニメーターが疲弊している現状では理想ですよね。理解はしていてもトップダウンで押し付けられてばかりではモチベーションも磨り減ってしまう。‘そこにやりたいことを忍ばせてやるぞ’と自主的に受け入れるだけで、全然疲労度も違うと思うんです。自分で仕掛けていくわけですから。この現状では大事なことの1つですけど、果たしてそれをどう経験させれれるか。



                      No.15 「悪循環に陥っていく」続く



 
       
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