2005.04.01  
   
 
 
  攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX
#04‘INTERCEPTER’ より
   
 

No.15 「悪循環に陥っていく」

堀川:アニメーターは、‘絵を描くことで食べられればいいや’って云うささやかな欲求でこの仕事に就く人が多い。初めからお金持ちになりたいって入ってくる人はいないと思うんです。そこからもうちょっと、アニメーターでも充分食べていけるんですよ、と云うものを、富山なら一軒家に住めるんですよ、くらいのところまで持っていくためには、ギャランティーのことにこだわるのは良くないと言うんじゃなくて、アニメーターも、商業的な、経済社会の一員と云う意識をもっと持たなくちゃならないと思うんです。それを会社の方針を通して浸透させることが必要だと。
井上:でも、みんな願望はあるわけだよね。俺達の頃よりはギャラのことを気にしているよね。俺の頃はアニメーションの仕事ができれば、別に食えることは先輩を見ていればね、食べているんだから心配はしていなかったし、別に食えなくてもいいやくらいの意識が―好きすぎてね、アニメーションが―あって、ま、それは今から思えばマズかったなとは思うけどね。もっとアニメーションで稼いでいくんだって意識は持つべきだったな、と思うけど、今の人達は俺達の頃に比べたらむしろそう云う意識は高いんじゃないの?アニメーションの仕事をしながら、報酬もしっかり取っていきたいと云う意識は強くなったような気はするけどね。その為の努力をあなた達はしているのかって問えば、ちょっと怪しいなとは思うけどね。能率は今のままで報酬だけ欲しいみたいなね、それは、あまりにアニメーションの単価が安いって云うのが‘情報’として流通しすぎているところがある。ま、安いは安いけどね。‘稼ぎが悪いのはアニメーション業界が悪いんだ’みたいな、どこか言い訳にしているところがあるんじゃないかと思うんだよね。単価は昔に比べればずいぶん良くなりましたよ。
堀川:それは馬力が落ちているってことですよね?
井上:うーん、出来高でバンバン稼げている人がいるんだから、同じようにやれば稼げると思うんだよ、今でもね。単価は確かに今でも間違いなく安い。高くは絶対にないよね。じゃあ高く高くって要求すればいいのか?それはだんだん悪循環に陥っていくと思うんだよ。
 
じゃあ、単価を高くする―それほど数をやらなくて済む―ますます数やらない―また食えなくなる―単価が安いからだって云う‘情報’が広がる―単価を上げろって云う欲求が高まる―(売手市場なので)単価はさらに高くなる、そうしているうちに段々効率が悪くなっていくような―テレビシリーズの単価は、どこら辺がいいバランスなのかわからないけど。
堀川:攻殻テレビシリーズでは、単価に見合う原画上がりは少ないんです。それは僕が今までの‘安い’単価を基準に見ちゃっているのかもしれないけれど。
井上:その人にとっては、それが‘私のペースでも食べられるギャラであたりまえなのよ’、と云う意識があるんじゃないの? それくらい貰ってやっと見合うんだって云うね。単価が少々高いからって描く原画枚数増やしたのでは食えない状況は変わらないじゃない。通常の単価で食えない人にとっては、描く原画は今まで通りで、攻殻の単価でやっと‘私のペース’に見合ったギャラになったって意識なんじゃないの?
堀川:原画枚数と単価のバランスの問題じゃないんです。上がりをもらったけど、演出、作監で全部修正しなければいけない。‘上手い人ばかりなら演出、作監は何やるんだ’って云う意見もあるかもしれないけど、せめて高畑勲さんが言うところの、原画と演出と作画監督とのアマルガム的共同作業(「作画汗まみれ」)にまではなっていないと、テレビシリーズでは稚拙な原画マンの‘作監殺し’と 一時言われていた状況が、‘演出殺し’にまで広がっている。とても担いきれなくなってきていると云う危機感があるんです。ここまで上がってきた日本のアニメーションの作画技術を、しっかり業界の若手に継承していかないと。





                    No.16 「モチベーションの半分」に続く


 
       
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