2005.04.04  
   
 
 
 
   
 

No.16 「モチベーションの半分」

堀川:作品の制作費は決まっちゃっているから、あとは報酬を上げられるのは商品としてヒットした場合の成功報酬を還元することなんです。会社として、先ほどの商業的な意識をスタッフに強いる見返りとして、それを体験させてあげられないかと思うんです。そのためには結果を出せる、物言える会社にならなきゃいけない。現場で制作していた頃の僕は、そのあたりは経営者に任せっきりでとても幸せでした(笑)。
井上:成功報酬があるって云うのはとってもいいことだと思うけどね。当たる作品を作ればギャランティーにも跳ね返ってくる。それはいいものを作るモチベーションの半分にも満たないとは思うんだけどね。それだけをモチベーションにしている人達が参入してくる可能性があるとしても、それはそれでいいことだと思うんだよ。ヒットを狙う意識って云うのは恐ろしく欠落していた部分だと思う。テレビ放映でヒットしたって現場はなにも関係はないし、ギャラは安いじゃ現場もいい物作ろうって意識は持ちにくいよね。これからはビデオグラムで売って、映画で公開してヒットしたら現場に還元されるとなれば、商業アニメーションとしてあるべき姿になっていく可能性は高いと思うんだよ。もっと姑息にでも、計算ずくでもヒットするものを考えないと。面白くて客を惹きつけられるもの、そう云う工夫をもう長いことこれっぽっちもやってなかったからね。ギャグアニメだったら、そのシナリオ本当に面白い?そのコンテで自分、笑いましたか?って云う意識を持ってね。シナリオが笑えなかったら、コンテで、俺の力で笑わせてやろうって。その場合、俺の力で面白くなったのに還元はシナリオだけかい、みたいな不満は出てくるだろうけど、今そんなことまで対応するのは無理だから。少なくともヒット作を作ったらそこに関わった人たちが潤うのは、商業アニメーションとして健全なんじゃない。

井上:お金持ちになりたいとは思っていないよね?でも、充分食べていきたいとは思っているよね?
川面:最近入ってくる子は、潤いのある生活がしたいって云うのはあるみたいですよ。
井上:そうだよね。
川面:僕なんかはアニメに関わる仕事につけただけで幸せって云うのがあって。
井上:俺もそうだった。結果的にしゃかりきにやってたら(出来高でなく)固定給でって話になったんだけど。まず人並みの生活はしたいよね?これだけ物が溢れてて、買うことも出来ないって云うのは不健全だよね。
川面:やっている人はやっているんですよね。
井上:バンバンやって稼いでいる人はいるんだよね。だから全然不可能じゃない。二極化が進んでいるような気はする。しかも俺が原画になった頃バンバンやっている人は、やっぱりものすごく薄味の原画を大量生産する人が多かったけど、今は松本憲生君のように濃い原画を大量に描く人がいるから。その人達を見て特殊だなんて思わないで、どうすればそんなに濃い原画が大量に描けるのかが、今、俺のテーマなんですよ、ちょっと。松本憲生、量産の秘密を俺は探らなければ(笑)。何か秘密があるはず。
堀川:飄々と描くこと?早いですよね。
井上:早いよね。あれ、下描きひとつも描いていないんじゃないかって云う描き方だよね。俺は薄く(原画の)アタリをとるけど、彼は片っ端から描いていくような描き方なのかな?そうでもしないとね、そんなに描けない。マイペースな感じでやってるんだけど、不思議なんだよね。

                       No.17 「俺の願望はね、」に続く


 
       
Copyright (C) 2004 PA works Corporation. All Rights Reserved