2005.04.08  
   
 
 
 
   
 

No.18 「最大のネックは教える側の問題」


堀川:井上さんが技術を若手に継承するときに、一番ネックになることって何ですか?
井上:ネック? ああ、簡単ですよ。頭の中で教えるべきことが整理できない。言葉にうまくできない。
堀川:現場がそう云う環境にないとか、受け手側の姿勢や経験レベル、問題意識ではなくて?
井上:もちろん受け手側である若い子達にそう云う意識が薄いのかなって云う懸念はあるし、ネックのひとつにはなっているよね。けど、最大のネックは教える側の問題だよね。教えるべきことが整然と整理できていないよね。それは昨日薦めた「アニメーターズ・サバイバルキット(リチャードウィリアムズ)」と「イリュージョン オブ ライフ(生命を吹き込む魔法:フランク・トーマス,オーリー・ジョンストン)」を読めばわかるけど、どうしてこんなに明快に必要最小限のことを―アニメーションをやる上でね―文章化できるのかって。頭が下がるよ。頭がさがるって云うか自分が恥ずかしくなるね。
堀川:今まで後進の人材育成で苦労をしたことがないって言われていましたが。
井上:そう。動画の指導すらしたことが無い。I.Gにいた時もやっていなかったし。
堀川:I.Gには後藤(隆幸)さんや黄瀬(和哉)さんがいるし、ジュニオに在籍していた時もほとんど出向だった。その井上さんがそう云う現場をもって、作画のクオリティーの責任も背負うことになったら
井上:そうだよね、自分が作監で・・・作監すらやらない俺がね、新人の原画を世話したこともないわけでしょ? それがあんまり理想論を言うと反発を持つ人もいると思うんだよね。
堀川:井上さんにはいつかそう云う現場を持って欲しいんですよね。講師としてではなくて、若手を育て上げる、ただ、井上さんを必要としている長編の現場がいっぱいあるし、まだ自分で追求しているものがすごくあるから。
井上:そう、しかもそれは一生終わらないような気がしているんだよね。だからどこかで自分がやっていることに見切りがついて、そう云う新人の養成が出来る時期が来るとは今は思えないけどね。「あんた贅沢だよ、なんで好き勝手やってるの」って言われても、その為に生きているわけだからね。俺がそうしてきたように、あなたたちも見習ってちょうだいね、で済ませてもいいんだけど、そう言ってしまうとね、才能のある人だけが伸びていけばいいんだみたいなことになって良くないことだとは思うので、俺もここのところそう云う意識をもって仕事に直接関係ないことでも頼まれたことをずいぶん引き受けているんだけどね。養成なんて関係ないって決め込んでしまってもいいんだけど―俺は自分が生きた足跡をのこしたいと思っているだけだから―とはいえ、競う相手がいないなんて寂しい話で、自分の存在を脅かす若手がいないなんて、そんな寂しい・・・脅かされてはいるけれど、少なくなってきてるよね。うーん・・・。



           No.19 「ほら、達成したい数字と、・・・現実と」に続く


 
       
           
           
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