2005.04.26  
   
 
 
 
   
 

No.21 「たぶん大したものはなかった」

井上:徒弟制度と言ったって、例えば、何色の色鉛筆使うんだ、影は青で塗るんだ、とか、タイムシートはこんなふうにう付けるんだ、とか云う今でもやっているようなことは教えていたと思うよ。でも、肝心の核になる絵を動かす技術については、はっきりしたものは確立もしていない。60年代の東映動画のころにもアニメーターの養成カリキュラムがあったかと言うと、たぶん大したものはなかったと思うよ。
堀川:無い? 誰か先輩に就いて学んだってことですか?
井上:うーん、先輩と言っても、東映史上で見ても動かす技術に長けていた人ってかなり限られているよね。
堀川:大塚康生さんがよく後輩を見回りに来て動きのアドバイスをしてくれたと云う話を読んだんですが
井上:そう云うのはあったと思うよ。「こう描けばメリハリがつくよ」って云うようなね。それは今でもできると思うけど。
ディズニーには確たるものがあっただろうけど、それはよく知らない(笑)。手元にある資料では、りっぱなカリキュラムがありそうなのはわかるけど。ディズニーで実践されていたようなことを覚えるには、そんなこと(先輩のアドバイス)ではないと思うよ。俺等が想像しているよりずっと難しいことをやっているからね。ただ、ディズニーがやろうとしていた表現自体にそんなに幅はないから、一生懸命勉強すれば身にはつけられるんだろうけど。
堀川:カルアーツ(ディズニーが中心になって設立したアニメーション専門教育カレッジ)にはあるんですよね?
井上:間違いなくあるんだろうね。
堀川:そのカルアーツのカリキュラムを取り入れても
井上:うーん、かなり現実味の無い話だね。卒業したときには描きたいモノは描けるようになっていて当然ってレベルだからね。向こうはアニメートに絞っているから。日本だとレイアウトもアニメーターが取るけど、向こうのアニメーターはレイアウト取らないから。
堀川:あ、そうなんですか?
井上:取らない。(注:昔は違うかもしれないし、今も国や作品によっても事情は違うかもしれない)
堀川:今、向こうは大量にレイオフされた手描きアニメーターはどうしているんですか?
井上:わからない。デジタルに移行できた人はしたけど、大半は廃業したんじゃない? よほど腕の立つ人はそれこそCGの学校でアニメーションを教えることもできるだろうし。
 だから本当はアニメーションの才能がとりあえずある人を採用するくらいじゃないとシンドイよね。原画の才能があるかどうか探りながら原画をやらせるのは。
堀川:原画の才能があるかどうかをどう見るんですか?
井上:見る方法なんて本当は簡単なんだけどね。パラパラ漫画描かせれば。別に原画って形にしなくても、走ったり、跳んだりはねたりって云うのだったら描き送りで全部描けるから。それでアニメーターの素養があるかどうかはっきり判るけどね。


                      No.22 「ヘタクソな人ダラケ」に続く



 
       
       
           
           
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