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      2005.05.04  
   
 
 
 
   
 

No.25 「限界を感じなかった俺」−今の価値観−B


井上:「パルムの樹」のキャラクターを作ったときも、(なかむらたかしさんが)「無駄な線が多い」って。もっと綺麗にまとめて欲しいって言われたんだけど、描いているときは、これはこれで若い子たちに(原画を)やってもらうんだったらこれくらいリアルなテイストも無いと・・・、若いと特にそうだけど、リアルな絵を描きたい、とりあえずリアルな絵を描けることが当面の目標になっている子が多いから、やっぱりそう云うテイストはキャラ表(キャラクターの設計図。原画マンはこれを元に原画を描く)には盛り込んであげないと食いついてこないんじゃないかなぁと思って、多少皺の描き方をリアルにしてみたり、手足をリアルにしたんだけど、それは「いらない」って言われたんだ。(作品の制作が)終わった頃にやっと解ったんだよね。たかしさんが求めているものが。そう云うものは本当にいらないんだって。もう、たかしさんが求めるものではなくなっているんだなって。
堀川:森本さんもバリバリアニメート追及の頃を振り返って、演出になってからアニメートに対する判断の仕方が変わったと。「アキラ」が終わったくらいから‘アニメート’ではなく‘何を表現するか’に徐々にシフトしていったんですね。
井上:そうだよね。ただまぁ、‘アニメートに何を求めるか’が見つかったから‘何を表現するか’にシフトしたって云うのはあるよね。完全に(アニメートで)行き詰ったからこっちにシフトしたんじゃなくて。
堀川:『そうだよ、みんな井上さんをみならって頑張らなきゃいけないだろう』と、先回のインタビューのときは思ったんだけど、それは間違いだと(笑)。ずっとアニメートを追求できる井上さんが特殊なんだと云うことが解りました。
井上:うーん。
堀川:言ってみれば、まだアニメートの部分で全然自分の描くモノに満足していない、同世代にそう云う人があまりいない。
井上:少ないよ。そう云う意味で同列でって云うことだと、まぁ意味は解ってくれているとは思うんだけど、アニメーションの、アニメーターって職種だけにこだわってね、同列で競争していた人達はいなくなりつつあるよね。現に長編(劇場作品)1つとっても同年代なんて集まらないもん。あぁ、久しぶりなんてことはほとんど無くて。
堀川:価値観のウェートのバランスが変わっていったと云うことですよね。アニメーションを職業にする上での。
井上:まぁ、行き詰ってそうした人もいるだろうし、新たに何か見つかってそうなった人もいるとは思う。いずれにしてもあんまりいなくなったよね。
堀川:アニメーターとして燃え尽きて別方向にシフトしたか、アニメーターの限界を早い時期に感じてシフトし直したか。
井上:限界を感じなかったのは俺のラッキーだったところだね。それなりのアニメーターとしての才能があったってことだと思うんだよね。
堀川:P.A.WORKSのアニメーターが、自分の今の価値観から、じゃあ、一人前の職人アニメーターになるためには、今何が自分にとっての課題と考えればいいのかですよね。与えられたカットを漫然とこなしていれば巧くなると思っていてはいけないんじゃないかと思うんです。
井上:でも、ただえさえ思い悩んでいる子たちに、更なる苦悩を与えるような(笑)。今はもっとシンプルにアニメーターとして技術的に巧くなることだけを求めていいんじゃないかと思うんだけどね。‘どんなアニメーターになりたいか’って云うことは、目先のことを上手にこなせるようになってから考えたって全然遅くはないよね。
堀川:それが自然に出来ちゃった人に聞いたのは間違いだった(笑)。もちろんその目標は徐々に変わるものでしょうけど。


                  No.26 「キーワードは執着と訓練」に続く

 


 
       
           
           
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