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      2005.06.01  
   
 
 
  攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX
#04‘視覚素子は笑う’ より

   
 

No.37 「完成しない原因」

井上:むしろおかしなことなんだけどね、全員が同じ理想を共有できるなんてことの方が。日本国内だと、アニメスタジオの中でもやっぱりいろんな(作画の)流派があるでしょう? ディズニーもトップが替われば作画スタイルが変わりそうなもんだけど・・・まぁ、ディズニーのここ数作品を見れば変わってはいるけれど、美意識と云うか、デザインのセンスも変わってはいるけれど、基本的に動かす技術に関して言えばブレていない。ディズニーも技術的には高いけれど、やっぱり一種の記号的な動きだから、新しい表現のようなものは殆ど出てきていないし、昔の技術を踏襲しているだけだね。そう云うものに不満を持つ人がいたら、トップが替わればガラッと変わりそうなもんだけど、ディズニーにはあまりそう云うものはないね。
堀川:「アナスタシア」の監督の
井上:うん、ドン・ブルース。
堀川:あの人はディズニー流ってのはこうじゃないんだ!って飛び出したんじゃないんですか?
井上:だって、それだってディズニーの黄金期のアニメートを復活させたいんだもんね。
堀川:それは、当時ディズニーが黄金期のアニメートから別の方向に行こうとしていたと云うことじゃないんですか?
井上:いや、別の方向じゃなくて技術的にすごく低迷しだしたころだったから。あと、すごく表現も保守的になってきていたのね。ドン・ブルースがディズニーを辞めた直後に作った「ニモの秘密」を見ると、表現的にはディズニーではできないような生々しい残虐な描写とか、単純ではない苦悩する悪役なんかが出てくる。保守的になりすぎていたディズニーに反発して出たけれど、技術的には黄金期のアニメートをそのまま踏襲している。
 この資料にもあるけど、振り向きの(振り向く動作を)原画(にするとき)は、こう描けばいいんだ、振り向くときに一旦軌道を下にとった方が綺麗ですよ、そう描くべきだって言われると、ディズニーではそれが美しいと思って実践するけれど、俺はどうしても『そうかな?』と思っちゃうよね。言い訳に近くなるけど、もっと多様なんじゃないかって云うふうに、日本人は考えすぎて結局どれもまとまっていないみたいなところがある。ディズニーでも今はアニメーターが記号的に解釈しているけれど、黄金期にはそう云う考えでは描いていなかったと思うんだよね。描いたモノが結果的に美しく見えた為に、振り向きはそうするべきなんだってパターン化されていった。日本よりも複雑だけれどもパターン化している。手もね、こう描くよりはこう描いたほうがいいんだって云う美意識がはっきりあるけれども、そうとは限らないんじゃないのって俺なんかは考えちゃうよね。
堀川:これは‘イリュージョン オブ ライフ’ですか? 手に入らないんですよね・・・読み物としても面白いですか?
井上:面白かったよ。同業者が読めば面白いね。
(資料を見ながら)こう云う発想って日本人にはないんだよね。複雑なものを単純化して構造を探ってみるって云う姿勢って日本のアニメーターには少ないよね。どうしてもアウトラインだけを追っちゃうけど・・・尤もそれは大事なことではあるんだけど。
堀川:うつのみや(さとる)さんはこれに近いですよね?
井上:近い近い近い。だからめずらしいの。構造を探ってみようとかさ、シンプルに考えてみようって云う考えは。手もね、この面とこの面の角度が違うんだって云うことに気づいているって云うことは大事なことなんだ。ディズニーではシルエットで何をしているのかわかるのがいいんだって言うけど・・・
堀川:それは日本でも言われますよね?
井上:けど、俺はそうじゃないんじゃないかなって思っちゃうんだよね。それに囚われてどうしても判りやすいシルエットになりすぎるから、本当はもっと複雑じゃないかって云うのがどこかにあって、どっちにも絞りきれないって云うかさ、どうしてもこれがいいんだって云う信念が持てないでいるのが、依然完成しない原因の1つだと思うけどね。それだけでも無いとは思うけど。


No.38 「俺達はそこに喜びを見出したんだ」に続く

 


 
       
           
           
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