いつから帽子が好きになりましたか?

さあ、いつだったかな? IG以前もかぶってはいたから・・・忘れました。
   
 

No.5 「泣こうが喚こうが、右」

堀川:作品を演出することが演出の仕事なら、現場を演出することがラインプロデューサーの仕事だと思うんです。今回の現場は、そういう意味で、神山さんは若い現場を引っ張っているようなところもあるでしょう? 演出ではなく、監督というポジションに立って3年間見渡してみて、単に「こういう作品を作りたいんだ」というものを超えてね、現場をプロデュースする、ということで狙ったことっていうのかな、見えてきたこと、仕掛けたものはどんなものでしょう?
神山: 「一つ、これは監督をやってみて初めて判った部分ね、見えてきたことっていうと、リスクも伴うし、申し訳ないんだけれど、僕の意見は強要していくので従ってもらう、というね、かなり自分も体力がいる作業―そこに一番力点を置かなければいけないってことを痛感したことですね。これは監督をやるまで判らなかった。理屈では判っていても、監督をやってみて初めて判ったことですね。」
「監督をやる以前は、そういうものに出会うと基本的には不快なんですよ、当然。みんな自我があるから。だけど、監督は指揮官だから。船が山に登らないようにするためには、泣こうが、喚こうが、『右』ってね。−しかも、『いや、左に行きたい』って人をねじ伏せてでも右にいかなきゃならないんですよ。ある時期からそういう人を見なくなった気がする。」

「居心地がいいスタジオは危機」
神山: 「僕が業界に(美術で)入った時には、美術監督をやられていた方々は、当然そうだったですね。経営者だとか、美術監督だからということも当然あるんだけど、うん、聞いたことはないけど、あたりまえの職務としてそれをやっていたと思うんですよ。当然ペーペーだから逆らえない。自分のスキルが上がってくれば面白くないと思う時期も当然でてくる。それで、プロダクションを飛び出してフリーになるとか、自分で会社を設立するとか、まあ、そうやってこの業界は脈々と続いてきているんだと思うんですよ。薄情ですから、こういう世界はね。
  でね、ある時期からそういう人を見なくなった気がするの。よく言えば、そういう『いや、そうじゃないんですよ』って言う人の力を寄せ集めて現場のエンジンにするのは見受けられるんだけど、それは破滅の一歩だって僕は思うんだよ。そういう人達にとってあまりに居心地がいいスタジオというのは危機だってね。もちろん、そういう人達を抑圧することがいいわけじゃないんだけど、絶対的な判断を下さなきゃいけない瞬間には、その人達が『いや、俺は左に行きたい、とか、後ろに行きたい』と言ったとしても、強制的に右に行かせなきゃならない瞬間が確実にあるんです。その選択を迫られたときには確実にそちらに行くということを曲げないこと。(攻殻では)その瞬間を、一応、逃げずに、やってきたという自負はあるんですよ。これは相当しんどい作業だったな、想像以上にね。それでも、やっぱりそれをやらなきゃいけないんだっていうのは、監督をやらない限り判らなかったことですね。」

「成功しない限り本当は左に行きたかった人達に、幸せを分け与えることは不可能なんですよ」
神山:最終的には強制的に右に行かせたことが、全スタッフにとって幸せであるっていうね、この結論を導いてあげることがいかに重要であるかということが、監督をやってみて一番痛感した部分です。ただし、そればっかりやっているとスタッフもいやになっちゃう。だからね、あたかも自分が右に行く選択をしたかのように時には導いてあげるっていうね。石川さんなり、押井さんなり、僕を育ててくれた三名の美術監督はね、おそらくそういう選択を迫られたときに、黙ってそういうことをしてくれていたということが想像できるようになった。振り返って、心ある人が僕の周りにはまだいたなぁ、ということに気づけたことですかね。それは一演出では気づけなかったこと、監督をやって自分が一番わかったことだったのかもしれません。さらに、さらに言うと、成功しない限り、本当は左に行きたかった人達に、幸せを分け与えることは不可能なんですよ。」失敗したら責められるし、恨まれるだけなんですよね。しかも、成功すると、誰もそのことは覚えていないんだよ。」
堀川:でも、どうなんだろう、監督について行ったスタッフからすると、「成功したら、これはみんな監督のものだよ」と思うからね。
神山:「うーん、僕も以前はそう思ったけどね、あのねぇ、そんなにないよ。」(笑)
「全スタッフが監督になれるわけじゃない。だからこそ、監督をやる人間は責任があるんだって思うんですよ。何らかの目標値を設定して、そこに到達する、させなきゃいけない義務があると思うんだよね。それ以外にたぶん、スタッフに報いる方法はないよ、と、思うな。」

 神山さんを現場の中心に据える―そうすることで攻殻の現場は監督の求心力でグルグルと転がり始める。プロデューサーはそう思案したに違いない。「器」は力学だ。クリエイティブなセンスだけでは現場は前には進まない。僕は「人狼」を担当したとき、既に配置されていた各セクションの人選にずいぶん助けられた。「転がる」ように仕掛けはできているし、顔ぶれを見れば完成クオリティーの予想もつく。スタートの時点でファイナンスを除けば、プロデューサーの現場対策は7割終わっていた。今回の攻殻では神山さんを中心に、周りを若いスタッフで固めて動き出した。これは、プロデューサーが初監督に、現場の中心であることと、方向付けをすることと、転がす重責をまとめて託したように見えた。僕には。それに応えて松家ラインプロデューサーをはじめ、若い制作スタッフが現場の勢いを長期持続させていくよう―まずは自分が勢いよく転がり続けられるよう―演出することが求められるのでしょうね。

No.6 「あそこに集まれば面白いことができそうだ」 に続く

 



 

 
       
       
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