2004.11.10  
   
 
 
  Q&A
   
 

No.7 「証拠さえありゃあいいよ」

―攻殻機動隊を制作し始めたころ、このフィルムクオリティーを「標準」として作り上げるだけの基礎体力が会社には必要だと思いました。これくらいで喘いでいるようでは、アニメーションの斬新な表現など望めないでしょうからね。ところが制作現場の現実は、その力量のアニメーターを揃えるのに非常に苦戦を強いられています。攻殻というタイトルを聞いただけで敬遠されることも多い。受け取る原画の質も、スピードも、要求に到達しているものは少ない。監督から求められているであろう基準に、あたりまえのように応えられないもどかしさがあります。これは今のアニメーション業界全体に言えることなのか、一時期の作画の「暴走」の反動から、現場が暫く大変なものを避けてきたことで、若いアニメーターの馬力が低下してしまったということなのか。神山監督がクリエーターに求めたクオリティーと力量の現状について聞いてみました。

やろうとしたっていう証拠があればそれでいいよ
神山:途中から意識を切り替えたのは、「レベルの高いもの」をやろうとしたと云う証拠があればいい、という言い方をしたのね。それに届いていなくても、これこれこういったものを作ろうとしたんだ、と。今の力ではそこに及ばないけど、こういうものをやろうとしたよって云う証拠があればそれでいいよ、と言ってたのね。ただ、それは妥協ではなくて、いま貸しているから後で上手くなって返してくれよ、というかね、それが楽しさに繋がってくれよって云う俺からのメッセージではあったんだけど、その意識がどこまで届いていたかは何とも言えないよ。
確かに大変だと思うんですよ。自分自身相当骨身を削って作りましたからね。それに付き合うのは大変って云うのは当然あるんだろうけど、要求したこと自体はそんなにメチャメチャ大変なことを言っているわけではなく、すごくあたりまえのことだと思うんですよ。ただ、攻殻というタイトルに先入観みたいなものはどうしてもあったと思うし、自分で縛りを決めちゃうって云うか、タイトルの重さに相撲を取る前から負けて降りた人も初期段階ではいっぱいいます。「これは僕には無理ですよ」と、まー、それは断りの常套句だった人もいるでしょうけどね。でも、そこで一生が終わるんだったらしょうがないけど、まだまだこれで食っていこうって人がね、もう、これ、大変ですよって云うんじゃ困っちゃうなって思ってね、やろうとした証拠さえありゃあいいよって俺は思ってたよね。で、その次の作品ではね、前の作品よりもここは良くなっている、とかさ、自分でもそれを見つけてくれればいいなと思っていたんだ。
ただ一つ心配なのは、業界自体が歳をとってるなーって感じがするんだよね。すごく。なんかね、いっときよりもみんな疲れちゃってる。そういう印象は受けちゃったんですよ、やってみるとね。

No.8「人力が資源だとするならば」に続く

 

 


 

 
       
       
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