作画のとび箱  
 
 

 

 

No.16 探究する姿勢―その@

* これが今までに描いた原画です。原画が足りないと言われたんですが・・・

吉原:原画内容については担当演出が立っている作品なので言ってもしょうがないけれど、たぶんね、根気の無さが出てると思うんだよね。飽きっぽいとか探究心が無いとか、日常そのものが出てると思うんだよね。熱意伝えるのは難しいんだけど、せっかく選んだ職業なので、ナメてかからないほうがいいと思う。
結局どれだけ時間をかけて描いたかでしか無いと思うんだよ。時間をかけずにどれだけやれるかってことも大事なんだけど、例えば6時間しか使えないものを8時間9時間使っちゃったって云うことが時間をかけるって云うことじゃなくて、6時間しかないのに6カット上げなきゃいけないときに、6時間集中してやれたかって云うこと。飯食う、風呂入る、たぶん半分しか集中していない。早く終わって早く休めるにこしたことは無いし、強制できないけれど、どれだけ集中して限られた時間を使えたかって、そこなんだよ。

 (原画を見て)このアニメートのセンスは悪くないと思うよ。線の表現の仕方はね。ただ、この「手」が残念だよね。ここがいいとすごく締まるんだよ。そう云う要素を他のところは持っているんだよね。でも、この「手」を見た瞬間に「ああ、まだ新人」。
表現をするのに時間がかかるものに対してまだまだなんだ。あと、人の絵を見たときにそこがいいと思えるかと云う部分もあるんだけど。内田春菊のホラーもののマンガ「呪いのワンピース」をアニメに起こしたのがあるんだよ。その絵のセンスがすごくよかったんだけど、それ系をもっと見た方がいいな。君の絵は鈍臭い感じは無いので、もっとシンプルな絵ですごいヤツを見たほうがいい。柴田由香さんのとかね。海谷敏久(IGPXキャラクターデザイン)をもっと見ておいた方がいいんじゃないか。シンプルでとても色っぽいラインを引く、サッと描いていい線を描くんだけど。ああいうのを目指していてそれが上手い人っているからさ、そういうのをもっといっぱい見たほうがいいよ。そうすると、この「手」を見たときに『わぁ、恥ずかしい、死にたい』って云うふうになるよ、そのうち。それくらいになった方がいいよ、むしろ。
 アニメのデフォルメの仕方って教わるものじゃなくて、自分がどういうものがいいな、これ真似したいな、と思えるかだから、そう云う人の絵があったら身近であるものでもいいからとにかく真似しろ。そのためにはもっとアニメを知るべきだな。いっぱい見るしかないよ。

* 好きな絵を描く人があまりいない・・・

吉原:どういうものを選ぶかも、これは個人のセンスなのでどれがいいとかは言えない。ただ、今じゃあ誰がキテルかくらいは敏感になっとけよ。同じアニメーター、自分の職業なんだからさ。漠然としているんだったら探せ。いろんな作品の動画が会社に入ってくるだろうから一通り目を通して、自分の目で見て上手いかもしれないと思ったら、もしくは、このセンス欲しいな自分に、と思ったら、とにかくそう云うものを全部吸収する。
この原画の「手」、これね、直すの大変よ。こんな「手」を描きたいなと思っている人は自然と直るんだよ。実は海谷は自分の我を通している絵じゃないと思うんだけど、あいつは仕事が好きだしアニメが好きだから、ずっと自分と似たセンスと思考のアニメーターの絵をマメにコピーして持ってたり、あいつ自身も上手いのに、人の絵をすごく見て、自分のものにしたいところを全部吸収しているの。こう云うのがすごく好きで描けるようになったんだなっていうのがすごくよくわかる。それすら無いっていうんじゃ無頓着に描いているということにしかならない。探すしかないんだよね。じゃあそう描きたいものってどんな絵なのかとかさ、今の君の原画からはまだ伝わってこない。もっとこう描きたいんだけどまだ描けていないだけだな、とかね。


No.17 「探究する姿勢―そのA」に続く




 
 
           
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