アニメランナー - ANIMERUNNER

No.12 現場スタッフを束ねるために必要なものとは

安田:この鼎談の冒頭で「自律的な制作会社」に関していくつか質問がありましたよね。

堀川:はい。

安田:その①の「アニメ制作会社が今後目指す選択肢」について考えてみましょう。大企業の傘下に入らず、制作会社として独立してやっていくのであれば、人数を増やさないで機能重視の組織運営にしていかないと生き残れないということですよね。じゃあどこまで広げたらいいのか、どの業態でおさめたらいいのかという問題はあるかもしれません。

菊池:結局、多くの制作会社が本業だけで事業を行っているとは思えないんですよ。アニメーション本編の制作費だけでは食べていけない。作り続けるためにそれ以外のことをやって収益を上げるような構造を模索せざるを得ないですよね。

ウチも本来本業で(頑張る)という方針が基本にあって、それは正しくて本来の美しい姿なんだけれど、さっきの業界の変遷も含めて、もうそういうマーケットにはなっていません。でもその中で自分たちの作りたい作品を、今後もみんなと気持ちよく作っていくためには、本業(の収益)だけではむずかしいという実態があるから、他社さんも多かれ少なかれ同様の考えなのではと思います。

堀川:製作費だけでは、クリエイターと契約するための付加価値の部分をとてもじゃないけどまかなえないから、グッズ販売とかカフェとか、他に収入の間口を広げることを目指している会社があります。今制作会社の形がどんどん変わりつつある流れの中で、これからの制作会社が目指すべき、理想にしたい例が(自分の中に)ある訳ではないんですよね。

安田:私は、堀川さんがご自身の理想を追求するべきなんじゃないかと思います。望むビジョンがあるのであれば、先ずそれを実現するということが重要な気がします。というのも実は、私も以前ちょっと似たようなことがあったんですよ。私がアニメと並行して統括している角川書店の実写映画部門は角川映画、大映、日本ヘラルド映画などそれぞれ歴史と伝統のある組織が合併しているんです。そんな実写部門を建て直すにあたって「業務改善のための13カ条」というのを作って、社員総会でみんなに配って説明しました。「こういうことをやりましょう」「こうするとよくなります」「これはやめましょう」みたいなもの。様々なバックグラウンドを持った人間の心をどうやって一つにしていくかを考えた時に、先ず私の考え方、思想を社員の方々に提示することが必要だと考えたんです。

堀川:その後それを継続的に見直す、浸透させていく方法には何か工夫があるんですか?

安田:作ったからやれるのかという問題はあるんですが、一つは出版のノウハウを取り入れて企画を数字的にプレゼンテーションするための会議や作品収支を検証する会議などを立ち上げました。自分たちがやっている仕事が黒字なのか赤字なのか、どうすれば良くなるのかを知る必要があります。それらを実感するための会議です。

菊池:なるほど。フィルタリングしているんですね。

堀川:「こういうものを会社が大事にしているんだ」ということを社員に浸透させていくための会議が必要だなあと思っていて、それは毎週やっているんです。現場はしょっちゅうトラブルがあるので、そのトラブルにどう対処していくかの判断基準、ウチの会社は何を大事にして作っているのかを現場に浸透させていくことが、新人の制作を育てることかなと思っています。

菊池:すごくシビアなインタビューが続いております(笑)

安田:なんか和やかな雰囲気なのでシビアな会話に全く即してないですね(笑)

堀川:いや、そんなことないですよ。内容がいろんなところに分散してますからね。

菊池:それをまとめるのが堀川の手腕です。大丈夫です(笑)

安田:ほんとですか(笑)?

堀川:頑張ってまとめます。

安田 猛氏

プロフィール

株式会社KADOKAWAの常務取締役として実写、アニメ、ゲームなど映像系コンテンツを統括。また株式会社プロダクション・エースの代表取締役会長、株式会社ドコモ・アニメストア代表取締役社長のほか、株式会社角川大映スタジオ取締役、株式会社キャラアニ取締役、角川メディアハウス株式会社取締役、グロービジョン株式会社取締役などを兼任している

P.A.WORKS制作作品では『Another』(2012年)で企画、プロデューサー、『RDG レッドデータガール』(2013年)で企画、エグゼクティブ・プロデューサーを務める。