P.A.Press
2019.4.5

P.A.WORKS入社式・P.A.養成所入所式 [堀川]

 4月1日にP.A.WORKSの入社式とP.A.養成所の入所式がありました。午前中に養成所の入所式で挨拶をしたので備忘録。

 この養成所での学習は1年後にプロのアニメーターになるための実践的なものです。1年前に入所した人たちの中から4名が、今日からP.A.WORKSの社員アニメーターになりました。

 将来アニメーターを職業にして食べていきたいと考えているみなさんは、アニメーションが大好きでいっぱい見ているでしょう。時間を忘れて没頭できるくらい絵を描くことが好きなんだと思います。養成所に合格したみなさんであれば、1年間しっかり訓練すれば昨年の入所生のようにプロのアニメーターにはなれます。

 プロになって仕事を始めたばかりの頃は、技術的にはまだ未熟です。でもですね、先輩もみんな初めはそうだったので、しばらくは下手でも仕事に向き合う姿勢さえよければ大目に見てくれます。毎日毎日大量の絵を描いて真面目に仕事に取り組んでいれば、大抵は数年で一人前のアニメーターになれます。

 でも、そこがゴールではありません。僕が長年多くの若手アニメーターを見て来て思うのは、割り振られた仕事をこなすだけになるか、見た人を惹きつけるようなアニメーションを描きたいと思うかで、ずっと仕事にモチベーションを見いだし続けられるかどうかが大きく変わります。

 みなさんは一人前のアニメーターになるまでにはまだ暫く時間がありますが、今からできる準備はあります。アニメーション…特にみなさんの場合は、作画の技術に強い興味を持って探究したいと思うようになることです。アニメーションの技術は1枚の絵が上手いだけではありません。動かす技術です。

 今までは沢山見ていただけのアニメーションかもしれないけれど、これからは、その中の自分が魅かれるシーンの作画を見て、どうやって描いたらあの画面になるんだろう? 何を意識して描いているんだろう? 自分もあんな原画を描いてみよう。誰が描いているんだろう? と興味を持って考え探究することです。

 天性のアニメーターはそういった探究心をプロになる前から備えています。今まであまりそういうことを考えてこなかったとしてもかまいません。まだ今は目標にしている原画マンの名前を一人も上げられなくてもかまいません。でも、これからは貪欲にそういうことを熱く語ってくれる仲間や先輩の話をいっぱい聞いて刺激を受けてください。それをきっかけにして、どんどん興味を持って自分で勉強してください。

 養成所では教えることはできます。環境を整えることもできます。興味を刺激してキッカケを作ることもできます。それらの与えられた刺激に反応して、作画に対する強い探究心が芽生えるかどうかだけは、あなたたちの持っている資質に委ねられています。プロのアニメーターはその資質を持っている人が、何十年も向上心を持って様々な壁を乗り越えて続けられる職業なのです。

 この1年間はしっかり勉強しながら新たに得られる情報や経験で自身の探究心を刺激して、自分のアニメーターとしての、あるいは創作者としての資質と向き合ってみてください。


4月の雪を耐えた富山本社近くの桜も、開花間近です

午後からは4人のアニメーターの入社式でした。本社社員に紹介を兼ねて挨拶をした備忘録でござる。

 えーっと、今朝からNHKの連続ドラマで『なつぞら』が始まりました。見た人? 

えっ・・・・・!!

 このドラマは1950年代の東映動画が舞台のモデルだと言われています。連続ドラマとしては100作品目ということで大変注目をあびていて、ヒロインの広瀬すずのインタビュー記事が毎日沢山出ています。日々膨大な登場シーンの撮影に加えて分刻みのインタビューをこなして、ハードスケジュールだろうなあと思いながら読んでいます。

 【さよ朝】の全国試写会の時は監督を横で見ていて、インタビュー本数をこなすのも大変そうだったしね。連ドラのインタビュー本数はその比じゃないでしょうね。

 彼女は周りから「朝ドラのヒロインは大変だよ」と言われているそうですが、「同じ大変なら、せっかくなら楽しもう」と思って撮影に臨んでいて、今は楽しいそうです。

「せっかくならこの状況を楽しもう」

 これは僕も長年仕事をしながらずっと思っていることで、良くも悪くも大変な時ほどテンションがあがるのは制作の職業病なのかもしれません。もちろん楽しむといっても喜びばかりではありません。怒りに闘志をたぎらせることも楽しみ方の一つです。

今日から4人のアニメーターが社員になりました。おめでとうございます。

 入ったその日から、周りを見渡せばスケジュールに追われる大変な制作環境に囲まれて動揺するかもしれません。先輩は彼らや若手にどんな背中を見せてやれるかです。自分は日々の仕事の中でどんな方法で何に楽しみを見いだしているのか。そして後輩にどんな仕事ぶりを見せてやれるかですね。

 『なつぞら』の主人公、奥原なつは存在するだけで周りが明るくなるようなヒロインなのだそうです。モデルと言われている小田部羊一さんの奥さんの奥山玲子さんもそういう活力のみなぎる人だったそうです。

 ベテラン・若手を問わず、自分の創作エネルギーが周りに与える活力を意識してみてください。もしちょっと落ち込んで元気が欲しい時には、活力にあふれる人に近づいてエネルギーを分けて貰ってください。そんなエネルギーは作画や映像からも滲み出て視聴者にも伝わるものです。

では、希望に満ちた4人の新入社員の挨拶を聞いてください。

堀川憲司

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