2005.08.24  
   
 
 
  Of course, it takes courage and imagination . Not everybody has that.
   
 

No.30 付録「愛と鴨汁うどんのデフォルト宣言」−最終回−

(石川):考えたの? 
堀川:はい。石川さんは「フリーのスタンスを考えることは鉄則だ」って。あれ以来スタンス、僕の考えたいテーマの1つなんです。以前「どうして作品が商品と呼ばれることを嫌悪するんだろう」って、問いなのか、呟きなのか、ポツリと洩らされたことがあったじゃないですか? あれから考えたんですが、やっぱり監督にとって作品は自分の価値観を刻む対象だと思うんです。クリエーターが愛を望む者だとすれば、自己を刻みつけた作品を通して監督は社会にコミットして、観客の‘愛’を獲得するんです。多くの人から批判される危険がるとしても、マスに向かって自己を一方的に開示する。精神的なタフさが無いとできないことですよね? でも、それを恐れて当たり障りの無いモノを作っていたのでは見る者の心になんか響かない。大量消費される一服の清涼剤的な作品を目指すのなら、それはそれだけれど。このまったく同じ対象に、流通は商品、お客さんは一過性の娯楽としてアプローチするわけですから、監督の‘分身’は商品価値を問われる、娯楽として計られる。それは、そう云うものなんだってことは理解できても作品に反映させるほど割り切れない。だから多くは自分の作りたい作品を作って、「判断はお客さんがするものだから」って云うスタンスだった。あるいは「観客に迎合しない」と云う弁明。作り手にとって面白いモノ、流通にとって面白いモノ、観客にとって面白いモノ、I.Gがこれから‘SMAPの時代’を目指すのならば、面白いモノを作って新たに5万人のI.G作品のファンの獲得を目指すのなら、表向き「お客さんに向かって歌っています!」って言いながら、SMAP! それ、裏声じゃん! にならないように、これらのバランスを取るプロセスに「ずばり、雑・草!」の、石川さんの、愛と葛藤のドラマがあると思うんです。
(石川):I.Gもね、これから制作を中心にマネージメントの質を改革するって云うのは出来ると思うの、これは、仕掛けさえすれば。今それをやらなきゃいけない規模になったんだよ。まず面白いモノを作るには元気のある現場を作ることが先だと思うよ。お客さんにとって面白いモノって云う作り手の意識改革はさ、ね、堀川、市場がクリエーターに生き残りをかけた選択を迫る時がくるよ。近い将来必ず。今の20代、若い世代にね。その時に意識を変えられるかどうかだよ。
堀川:あ、今、サラリと僕らの世代を見放しましたね?
(石川):うん。ん? (笑)。
堀川:走り出した王蟲の群れに向かって「回れ右」って言うのは無駄だと思いましたね?
(石川):うん。ん? いやいや(笑)。
堀川:でも、石川さんがI.Gに作ろうとしている作り手にとって最高の環境には、逆の意識を持った‘暴れるディレクター’が宿る可能性も大きいでしょう? 
(石川):ああ、そうね。
堀川:それでも、石川さんは彼らにビジョンを強要しないじゃないですか。I.Gは世界市場から求められるものを作るんだ、と、作品にエンターテインメント性や話題性を強いるわけでもない。
クリエーターを知り過ぎてしまったんですね。制作進行から20年以上ずっと彼らと付き合ってきて、スタッフが誠実にモノ作りに没入する姿勢に対する強い敬愛の念と、その一方で、共同作業の現場に身を置きながら、協調性に欠けた姿勢や、‘宿場町の用心棒’の甘えに対する腹立たしさ、それらもひっくるめて石川さんは「そう云うもんだよ」って・・・、ずっと彼らの庇護者になってきたんです。「のるかそるかの大冒険を愛好し、生産力の乏しき者を保護し、救い難きまでに飾りめかしたるものを擁護して、しかも理不尽なるまでに謙譲なる、生まれながらの大芸術家編集者ウィリアム・ショーン氏」(J.D.サリンジャー担当の編集者)のように。‘それって・・・相手には伝わらない’と、クリエーターは愛のデフォルト宣言をするものだと知っているのに。そうですよね?
(石川):
堀川:人を軸にして改革し続けるために企業は必要な人材を代えていかなきゃいけない。愛を求める者を外す決断をしなければならない時に、彼等の最大の庇護者が痛みと向かい合わないわけが無いと思うんです。愛とは決して後悔しないこと? 逆ですね。決して後悔しない、そう言い聞かせているんですよね? 1勝1敗の変革を続けるために。
(石川):堀川。
堀川:はい。
(石川):見たことある? 『リトルロマンス』。「必要なのは勇気と想像力だ。誰にでもあるとは限らん」。ローレンス・オリヴィエのセリフ。
堀川:(僕の)ジョージ・ロイ・ヒル監督ですから。『華麗なる飛行機野郎』の「あのジャッカルの群れがパイロットを見にきていると思うか? 血なんだよ。これは死が売り物の商売なんだ、ペッパー。名パイロットじゃない」、「戦争が続いていたら君の真価もそれを証明できたが・・・もうそんな飛び方は終わったんだ。これからの飛び方を考えろ。」ってね、当時ハリウッドで監督はプロデューサーと対立したのかな? なんて想像もしますが、あの話を後味爽やかなエンターテインメントにしてしまうところが、この監督は人として強いなぁって・・・宮崎さんとか、ケン・ローチとか、強く人間くさい生き方を描く映画監督が少ないですよね・・・刺激的な映像ばかりで、最近。話がそれちゃいましたけど。
(石川):うん、そうね。じゃあこれで終わり。今日はご馳走になるよ。一度くらいいいでしょ?
堀川:あれ? 逆逆 えっ? 石川さん? えーっ、この鴨汁うどん一杯1150円もしますよ! 800円くらいかと・・・。
あっ、ちょっと待って下さい! えーっ、えーっ!

あの・・・すみません。お勘定を・・・石川さんのツケにしておいてください。


3名のインタビューで感じたこと。録音したテープ起こしって大変。でも記録して時々読み返すことで、今でも新たな発見があります。やっぱり刺激的で頑張っている人の話を聞くことは大切ですね。このコーナーの企画意図だった「活気ある現場の演出」「業界の現状に対するアンチテーゼ」についてヒントをいっぱい貰ったので、現時点で僕なりに理解したことを現場にフィードバックする試みを始めました。その試みを記録することで、P.A.WORKSは今何を目標に取り組んでいるかを明確にして、いつでもそこに立ち返ることができるようにしておきたいと思います。
その取り組みの記録− 次回更新は10月予定です。

 


 
       
           
           
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