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  No.08 「削がれたオリジナリティー」

後藤:何でも描けるって云うのと、オリジナリティーがあるって云うのは別なの。クリエーターはオリジナリティーを持っていないといけない。
堀川:そうなんですか?
後藤:そうそう。少しでも目立つことは、やっぱりクリエーターにとって大事なことだと思う。オールマイティーすぎると、どれが自分なのか判らなくなる。I.Gっぽいものは描けるけど、それ以外のものは描けなかったりとか。例えばもし、俺が原作モノをやらないで「赤い光弾ジリオン」とか、俺のオリジナルキャラクターの作品が続けば、俺はたぶんオールマイティーじゃなくて自分の決まったキャラしか描けなかったと思うんだよね。それで攻めていくしか無くなっていた。でも、ずっと原作モノで自分に無いものをやってきたので、自分なりにそれは成長したとは思うんだけど、じゃあ今オリジナルなものを描いてくれって言われると、昔の自分のモノは何にも無くなっている。後藤っぽいモノかも知れないけど、今までやった作品に影響されたキャラになっている。これも描けるあれも描ける、何が来てもそんなに驚かない、そつなくこなせるようにはなったけれど。
そのあたり、個人個人がどこに焦点を合わせて、どんなクリエーターになりたいかって云うのと、会社の考え方っていうのは、またこれは違うんだよね。会社としてはオールマイティーになれば、どんな作品を受けてもカットをいっぱい上げられるっていう単純な発想が出来ると思うんだ。正直に言って、本当にそのクリエーターのことを心底考えているわけではないと思うんだよね。それもある程度考えつつ、実際は会社をどうやって経営していくか、大きくしていくかって云うのが前提にあると思う。そのためにアニメーターを育てていくって云うね。
俺は今までいろんな作品をやって自分の実力が上がってきたって云うのは、そう思わないとやっていけないって云うのもあるの。もちろん最初に描いた頃のキャラと、今描いたキャラでは、昔のキャラ表(*1)見ると本当に恥ずかしかったりするんだけど、やっぱりパワーはある、若さとか、自分の主張みたいなね。でも、今描くと収まっているという感じがするのね。そう云うのが・・・今まで十何年を俺はその路線のまま走ればよかったかもしれない。でもI.Gって云う会社を作ってしまったわけだから、I.Gは劇場作品を中心としてやってきたわけだから、石川に「何か俺に合う作品持ってきてよ」って言っても、「いや、ゴッチャンね、I.Gはこう云う作品しか来ない」って言われていつもそこで話しは途切れているんだよね(笑)。だから、それだったらそれに沿ってやるしかないから、それをやることによって自分のレベルはもちろん上がったと思うけど、まぁ、今振り返って見ると、段々自分のオリジナリティーはそがれていっちゃったよな、という気持ちは正直あるよ。でも、それを愚痴として言ったことは無い。
堀川:P.A.は今年全国の美術系の課のある学校99校にアニメーターの募集を出したんですよ。即戦力の専門学校は会社説明会にも行ったけれど、ほとんど応募がなかったからそうしたんです。今年は60人くらいの応募だったんですけど、そうすると、アニメーターをずっと目指していた子と云うよりも、好きな絵を描いて食べていける職業の1つとして、アニメーターと云う道もあるのかな、くらいの志望動機の子も多いんです。最近では大学の授業でアニメーションもよく取り入れられているようなので、採用面接試験でどう云うアニメーション作品が好きなのって聞くと、ユーリ・ノルシュテインだったり、ヤン・シュヴァンクマイエルとか(笑)。自分のオリジナルでアート系の短編を一本作りたいって云う夢を持っているんです。その気持ちは大切に持っていて欲しい。でも、それを具現化する手段を君たちは今、持っていないよ。憧れているだけ。10年間、一流のアニメーターになるまで、商業アニメーションの洗礼を受けて表現する手段を身につけた後に、業界に入ってきた憧れの動機としての、そのモチベーションが擦り切れていなければ、君は表現する手段を手に入れたのだから、それを自分のオリジナリティーとして形にすることができると思うよ。でもその前に商業アニメーションですぐ消耗してしまうようなモチベーションだったら、結局その程度のものだったんだと。商業アニメーションで強いられる物量がどれほどの糧となるかをナメちゃいけない。10年描き続ければ成長の度合いが全然違うって云う話を、今年採用した動画マンとの面談でしたんです。君たちは、今は具現化する手段を身につけなさいと。まだ思うように原画1カットも描けないのが現実だから。
彼らがそれを手に入れたときに、彼らがやりたい表現を形にできるまでのアニメーターになったときまで、大切に初心の憧れは持っていて欲しいと思っているんです。P.A.にもそんな人材が出てくるのはいつのことか分かりませんが、そこまでの技術をみんな身につけて欲しいなという思いがあるんですよ。その先に、これはP.A.の意味なんですが、プログレッシブなアニメーションの創作にチャレンジしたいなって。それで僕を刺激して欲しいんです。ずっと先の夢ですけど。

   
   
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