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  No.22 「フリーならギャラ」

堀川:SSSは年内に絵コンテ完成の見通しなんですが、「妥協せずに作りたい」ってみんなが言ったあの決起集会の話、映像のクオリティーを上げるには、更にこれから優秀な原画マンを集めなきゃいけない。スケジュールが無いところで、作監に負担のシワ寄せがいかないようにしたいですよね。上手い原画マンを口説く上で、僕ら制作が自信を持って、「こう云うことであなたが必要なんです、参加してください」って云うものを持っているか持っていないかで、全然原画マンに対して説得力が違うと思うんです。攻殻の作画は先ほど言われたように自由度が少ない、求められる作画レベルは高い、今アニメーターは遊べる部分が欲しい。じゃあ、この攻殻で口説きたい原画マンに対する売りはなんだって云うのは、未だに見えてこないんです。それで、今回攻殻に参加する、しないに関わらず、いろんな原画マンに協力してもらって、何が今回のセールスポイントになりうるのか話しを聞いたけど、なかなかな確信が持てないでいるんです。Aパートで今参加してくれている人の参加動機を聞くのも1つだし、後藤さんにもアイデアをもらおうと思っているんです。制作がこれから優秀な原画マンを口説くヒントが欲しいんですが。
後藤:もし自分がフリーの一原画マンとしたら、たぶん、とりあえずギャラかな(笑)。
堀川:(笑)
後藤:大変な作品をやるときに、もちろん手なんか抜けないわけだから、ギャラがよければ時間もかけられるし、それに見合った仕事の仕方ができるからね。
例えばね、制作費内でやっていることだから、今はこれくらいしか出せないけれど、今回何万本売れて、分配金がこれくらいになったら、成功報酬としてやってくれた原画1カットにつきいくら出しますとか、そう云う取り決めがあったとしたら、何かお徳感があったりするかなと、そこのところかな。それが1つ考えられるのと、あとは、制作が金の卵を見つけ出す。いろんな作品を見て、あのシーンは誰がやったんだろうとか、今若手で誰か上手いなって云う人がいたとしよう。若い人たちは貪欲さがあるから、ギャラと云うよりもいい作品とめぐり合いたい、腕試しをしたいと云う思いが多分強い。そう云う人を他の作品からみつけて、ちょっと当たってみるとかね。ある程度何年もやっている上手い人はやっぱり安定性も求めると思し、拘束もされているだろうから、そう云う若い人を見つけるのも1つじゃないの? あとはスタッフに「いい原画マン知らない?」って聞いて回ると云うのもあると思うよ。
堀川:たしかにアニメーターも35超えたら、収入は選択肢の大きなウェートですよね。成功報酬は現場の励みになると思います。先ほどの攻殻S.A.Cの話しにもあったように、原画マンがやっていて生活が苦しかったのであれば、ソフトが売れたときに、君はこの売れた作品にこれだけ貢献したから還元しますって云うのは励みになりますよね。ギャランティーは、この人には投下する価値があると云うところに集中投下したい。その貢献の付加価値は判断基準が非常に難しいですよ。上手い人、大変なところをやてくれた人、カット数やってくれた人、スケジュールにきっちり合わせてくれる人、何で貢献してくれたかはまちまちなので判断基準が非常に難しい。そこの判断は、たぶん民主的には決められない。
それと、いろんなアニメーターに何が作品の選択基準かを聞いたら、作監とか、演出とか、知り合いの原画マンに頼まれたとか、借りがあるとか。誰が作品に参加しているかなんですね。「人狼」はほとんどそうだったと思うんですよね。「沖浦さんが原画を見てくれる」っていうところだったと。実はP.A.が請ける作品を選ぶ動機も振り返って考えてみると、もちろん経営のことも考えていますが、攻殻は神山さんの作品だからだとか、鋼の錬金術師は安藤真裕(*1)さんに声掛けられたからだとか、IGPXはいつもピンチに海谷敏久(*2)さんが助けてくれていたから、少し借りを返しておこうとか、そんなのばっかり。なんだ、アニメーターといっしょだと今更ながら気がづいた(笑)。

*1:安藤真裕 演出・アニメーター 今はBONESに在籍。命の恩人。
1999年春、「メダロット」の原画マン集めに奔走していた頃、原画を振り切るまで会社に戻らないと決めて車で出かけて24時間。それでも振り切れなかった僕は、途方にくれて携帯で安藤さんに電話しました。
堀川「もし、この依頼を断るなら、僕にここから飛び降りろと言ってください」
安藤「分かりました。やりますよ」。
(*注:真似するときは、あまり高いところから電話をしてはいけません)。

*2:海谷敏久 アニメーター・IGPXキャラクターデザイン
彼に安藤さんと同じ頼み方をしても、「じゃあ、飛び降りて下さい」と頼まれるのは分かっているので、命がいくつあっても足りません。別のアプローチをします。「人狼」であれだけ彼の遅さを責めたことを今は後悔しつつ、それはそれ、これはこれ。

   
   
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