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  No.05 「もっと漫画?」

堀川:攻殻の作画で、アニメートの部分の面白味は何だろうかって云う話をずっと聞いているんですが。
中村:どう云うアニメートが面白いって言うんですかね?
堀川:聞いてみると、このシーンは僕が描いたってアピールできるような、ハッタリの効いた、けれんみのあるアクションが多いですね。
中村:もっと漫画?
堀川:そう云うことですね。地味な芝居は今のアニメーターには敬遠されます。中村さんの世代はリアルな芝居を追及した世代ですね。
中村:ええ。
堀川:みんな20代でそこに挑んだ人たちが、今は40代前後になっている。今の若いアニメーターは、もうそこを目指していなくて、もうちょっとマンガっぽいもの、カリカチュアライズされた動き。80年代、90年代が特殊で、今は元に戻っているんですかね。それが悪いとは全然思わないけれど、でも、攻殻の世界観は監督の云うように「作品がそれを許さなかった」(神山監督語録No.017)部分がありますよね。
中村:そうですね。S.A.Cに参加して最初のキャラを見たときに、すごく作品の世界観とのギャップを感じていたんですよ。
堀川:キャラ表(キャラクター設定)ね?
中村:ええ。こんなにシリアスな話なのに、バトーのオチャラケた表情があったり、モトコのはにかんだような顔が描いてあったり(笑)。
堀川:ありましたね(笑)。
中村:これはどう云うことなんだろうって。お話の世界観とキャラ表が求めているところの差をどう理解すればいいんだろうって。自分でもあまり似せられないので、「草迷宮」まではキャラ表を撫ぜたりして、なんとか近いラインで描ければなと思って描いていたんですけど、やっぱり全部キャラ表の顔が違うので(笑)
堀川:(笑)
中村:難しいんですよね。「草迷宮」の後あたりから、モノの流れが何か異様な速さで怒涛のごとく押し寄せてきて、そこからは息もつかせぬ感じで「機械たちの午後」と「北端の迷走」と「楽園の向こうへ」を(笑)。『ええっっ!』って、そんな感じでしたね。
堀川:確かに『この内容をこんな間隔でやっているんだ』って(笑)。
今回の攻殻SSSでは、後藤(隆幸)さんがキャラ表をかなりリライトしていますね。
中村:うん。かなりリアルな、落ち着いた感じのキャラ表に。
堀川:この世界観、このキャラクター設定で、きっちりした芝居で見せていこうとすると、『うわー、大変そうだな』って、尻込みされてしまうことが多いんです。それで監督と、上手いアニメーターにとっての参加メリットは何だろうって云うことを、定例ミーティングで長い時間をかけて話したことがあるんです。制作がアニメーターを説得する材料が何か欲しかった。監督の脇は甘くないしね、攻殻の世界観の制約もある。監督が「80年代の(作画の)奔放さの功と罪」(神山監督語録No.019)って言ってたんです。それでアニメーターは伸びた、アニメートの表現の幅も広がった、良かった部分もすごくあるけれど、そう云う暴れ方をしたいのなら、攻殻SSSではないって云うことですね。
中村:そうですね。アニメーターが目立ったことができる作品では無いですね。どこかが突出したことができるって云う作品では無いかな。やっぱり最終的に上がったものが面白い。どうなんですかね、けれんみのある奔放な動きをやりたい人たちにとっては、我慢を強いるのかもしれないですけど(笑)。

   
   
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