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  No.10 「3年後に見ました」  

堀川:中村さんはこれまで劇場、長尺作品にもいっぱい参加された経験があると思うんですけど、どうですか、「この作品はやり切ったな」って云う達成感を得たものはありますか?
中村:いや、劇場作品って作画をやっているときには、実際にフィルムを見られないことの方が多いんですよね。
堀川:そうですね。
中村:作画作業が終わってずいぶん経ってから劇場にかかる。でも、そのころになると、作画についての話が特に聞けるわけでもなかったり。リアクションが返ってこないとテンションも上げようがない。描いた原画をラッシュ(フィルム)で見るまでに3年かかった作品もあるんです(笑)。
堀川:(笑)中村さんは3年で済んだんですから。たぶん8年って云う人も・・・
中村:でも、3年見られなかったんですよ(笑)。普通の劇場作品だったら、3年前に上げた自分のシーンを映画館で観られるじゃないですか? ラッシュで冒頭のシーンを3年後に見ましたからね。何かこう、実際に描いているのか描いていないのか判らない、全体を覆う空気が低いところをすごくゆっくりと流れているような感じなんですよ。最後の追い込みの頃はそんなことも無かったんでしょうけれど、僕が参加していた3年間は、作業が流れているのかいないのか、よく分からなかったな。
堀川:その期間中どうやってテンションを維持できたのか是非聞いてみたいんですが。
中村:維持は最初の1年くらいまでですよね(笑)。僕も緊張感を持って、なんとかテンションで上げようとしたのは。長尺も2年、3年の作画期間となるとちょっと無理ですよね。
堀川:そんなときに僕がもし担当だったら、原画マンのテンションを維持するために何をするだろうなぁ・・・。とりあえず上がったカットから原撮して繋いで見せる。動きはチェックできるし、繋いで見たときに自分の担当カットだけ白味(映像が無いフィルム状態)だったら、無言のプレッシャーになりませんかね?(笑)。それを後で特典DVDにするんです。「作画監督無修正原撮・担当原画マンの名前がボールドで入る・画面分割でタイムシートも見られる・更にそのタイムシート上をバーが移動して、タイムシートのどの部分の映像が写っているかがコマ単位で分かる。みんな早く原画を上げて見たくないですかね?劇場大作でこれをDVDで出したら世界のアニメーターに売れますよ。そんなソフトをセルシスあたりが開発してくれないかなぁ。自分がどんなものを上げたのか映像で見られないのは、やり甲斐が無いかもしれないですね。
中村:分からなかったですね、本当に。
堀川:僕は海外の原画のレベルが伸び悩んでいるのは、そこだと思うんです。自分で描いた作品が見られない。評価のリアクションも無い。自国自作でもっとTVシリーズが放映されるようになれば、レベルは急速に上がると思っているんですよね。
今、劇場作品の制作期間がどんどん長期化していますから。スタッフの緊張感を維持するために、上げたものに対する評価のリアクション方法はもっと考えてみたいですね。でもですね、今回の攻殻SSSは長尺ですが、一週間の作監ノルマの話しをしただけで緊張しちゃうかもしれないですけど(笑)。それでも、自分の目標値を週単位で細かく設定しておかないと、特に作画監督は作画全体のクオリティーコントロールを背負っていますから。
中村:ええ。
堀川:この作品一本通して、作監を入れ切るためには、コンスタントに一週間でこれくらいのノルマをこなしていかなければならないと云うものがあります。
中村:ええ。
堀川:制作も新人が多い中で、長尺の経験豊富な中村さんにその部分をリードして貰わなければいけないことも出てくると思います。

   
   
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