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  No.12 「数学の公式は使えない」

関口:クロッキーじゃない気がするんですよ。レイアウト用紙に収める技術って云うのは。あるに越したことは無いデッサン力ですけど、何か作画の実践に活かすことを意識したクロッキーの方法がいいんですかね? 着ている服を違う服にしてみるとか。
堀川:うんうん。
関口:実際に立ってもらってポーズを決めるじゃないですか、その横に作品のキャラクターを持ってきて、それに変換して描くとか。一時期そう云うことをよくやっていたんですよ。このポーズいいな、と思った写真があったら、それを自分の好きなキャラクターに描き直してみたりとか、それは一番役立った気がします。
堀川:それいいね。あの・・・もう10年前になっちゃうけど、エヴァンゲリオンの#18だったかな、黄瀬さん作監の回の教室のレイアウトを見たときに、『何じゃこりゃー』と思った。前かがみに肩の力を抜いて座った、自然な姿勢がすばらしかったの! 
関口:はい、そうですね。
堀川:みんなね、クロッキーのときは力を抜いて座ったポーズが描けるんだけど、原画では力んで座っているのね。直立の骨格しかイメージできないからかな。何故クロッキーのあのポーズが原画に活かされないんだろう。
関口:そんなに簡単には行かないですよ。
堀川:不思議だったから、クロッキーのときに顔だけキャラ(表)の顔にしてみたらどう?って、俺、そう言ったの。それを反復すれば実践で活かされるよ。硬いポーズ描いたら違和感を覚えるはず。『描いては見たけど、なんか変』って。
関口:(笑)、あの、昔数学で公式を一生懸命覚えたんですよ。でも、どう云う時にどの公式を当てはめればいいのか判らなくて使えなかったんですよ。
堀川:そうか。
関口:結局どこに覚えたクロッキーの公式を当てはめればいいのか判らないんですよね。それなら実用例で覚えていっちゃう。絵コンテのこのカットを今日はクロッキーの題材にしてポーズをとってみる。そのカットを担当した原画マンはラッキーって。
堀川:今は便利なデジカメがあるから、そのポーズを撮ったものを参考にするようなことはやっているみたいだけど。
関口:ああ、そうですね。
堀川:あとはクロッキーのときに、俯瞰とかアオリとか腕ナメの位置からデジカメで撮っておいて、カメラが写したものを想像で絵にして見なさいってやってる。描けないですね、本当に。
関口:描けないですね。活かす部分と活かさない部分って実際に違うじゃないですか。その見せ方って深いですよね。
堀川:その描けなさっぷりを見たときに、想像でどんなアングルでも描ける原画マンって、俺が今まで考えていたよりすごいんだなと気が付いた。15年目にして。
関口:(笑)
堀川:初めてその遊びをやったときに、床からアオって人物撮ったの。描かれた絵には足の裏が描かれていたんだ。床から撮ったらカメラに足の裏が写ると想像したってことだよ。原画マンとのこの差は何だろと。頭の中でそれが組み立てられるようになるにはどれだけ訓練がいるものなのかと。
でもね、この遊びは絵が下手なのは別にしても、俺の方が新人よりも解答に近いものが描けたりするんですよ。それはたぶん、そう云うアングルの絵を原画でも動画でも、実際の仕事で見てきた構図がいっぱいインプットされているからだと思うの。いい絵をいっぱい見ると目が肥えてくる。「人狼」を作ったあとは暫くの間アニメを見ていても、キャラの動きがパースに乗っていないと気持ち悪くてしょうがなかった。そんなところは目をつぶった方がアニメを見るときには楽しめるのに、ストーリーには全然身が入らない。質の高いものをいっぱいインプットするのも良し悪しだね(笑)。どんな飯でも美味いと思える幸せもあるけれど、彼らはプロのアニメーターだから、その幸せは諦めないとね。

   
   
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