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  No.03「描ける人はちゃんと聞いている」

堀川:じゃあ、ついでに聞いちゃうけど、演出の立場からアニメーターに求めたいことは他にはある? 特に作打ち(作画打ち合わせ)だよね。作打ちで意識しているポイントはある? 何度打ち合わせをしても、上がってきたものを見ると何故かこれは全く伝わらないって云う経験があると思うんだよね。
橘:そうですね、『また言ったこと聞いていないよ』って。
堀川:(笑)
橘:作打ちのときにはカット内で必要なアクションとか何を表現したいかと云うことを話します。誰かの台詞を受けてキャラクターの顔のアップになったら、ここはこのキャラクターはこう感じているから含みのある表情を作ってくださいとか、そう云うところで話をするのであまり細かく突っ込んで打ち合わせはしないですね。必要なことは大体絵コンテに書いてあるじゃないですか。その中で、絵のタッチで必要になる部分とか、絵コンテに描かれていない芝居を補足していますね。結局上がってきたものの画面の納まりでまたニュアンスが変わる部分があるので、そう云うところはレイアウトが上がった段階で更に追い込んでいきます。
堀川:伝わらないことの傾向はある? 例えばね、攻殻の場合だと、3Dの車などはレイアウトの段階でモーションのラフまで描いてタイムシートもつけてくださいって云う作打ちをするよね? だけど、見ているとまずそうは上がってこないよね? 
橘:確かに3Dでは本当にそれはありますね。
堀川:不思議、謎と言ってもいいくらい。
橘:ええ、最初の内はそう思っていたんですけど、結局それも全部こちらで描き直しちゃうことが多かったので、それはもう麻痺して考えなくなっていましたね(笑)。こちらで描いちゃう、みたいな。
堀川:上がってきたものは描き直すことが前提の下敷きだって云う感覚なのかな?
橘:いや、上手い人のレイアウトは全く直さなくていいですし、そう云う絵を描ける人はちゃんと打ち合わせしたことを聞いてくれる人ばかりなので。
堀川:そうなんだよね、描ける人ってもう作打ちのときの質問内容が全然違うんだよ。その答えで演出の力量が試されるから答える方も緊張させるんだよね。作打ちを聞いていてもニヤリとしちゃういい緊張感があるんだよ。
橘:そうですね、だから心配しなくてもいい方は、上がりに作打ちした情報が全部詰まっていて、そこからひと盛りふた盛りしてあるんです。結局経験になってくるんですかね・・・分からないですね、どうして抜け落ちているのか本当にそこは(笑)。
堀川:でもそれが最近の傾向だとは思わないんだよね。大勢はずっと昔からそうだったと思うよ。
橘:レイアウト作業では背景原図を描いてキャラクターの納まりまで決め込めばいい、その後芝居を決め込んでタイムシートを打つのは原画のとき、みたいに自分の中のルーチンワークとして決めちゃっているから打ち合わせは聞き流されるのかな。それと、僕も監督との演出処理打ちで時々一瞬聞き逃したりすることがあるんですよね。『このカットの処理どうしよう、これどう云うふうにBOOK分けしよう』とか、絵コンテを眺めていてフッと意識が別のところに入っちゃうと聞き逃すんですよね。
堀川:なるほど、そうか、演出は話術が必要だね。強調とか繰り返しとか、聞き手の記憶に話のポイントを引っ掛けるための間とか。それは大変な技術だわ。うーん、確かに僕も原画をやって欲しいって云う一心で原画マンと話をするときは、自分に都合の悪い答えは全然聞こえていないらしいんだよね、たまに指摘されるけど。

   
   
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