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  No.05「攻殻が求めているクオリティーありき」

「演出スタイルは制作状況が生み出すもの」(神山監督語録No.17)

堀川:その言葉はすごく痛感するところだけれど、逆の言い方をすれば、監督や演出には現場の力量に応じた演出スタイルにシフトする能力が求められるってことでもあるじゃない。それが乖離すると現場が破綻しちゃうからね。攻殻TVシリーズではそれを意識したことがある?
橘:攻殻の場合は逆に「攻殻ありき」で始まっていたじゃないですか。クオリティーを求められている。原画さんも描ける人を集めると云う前提のもとに絵コンテの作業をしていたので、そう云う意味ではたぶん現場の力量を見ながらと云うよりも、作品が求めているクオリティーありきで作っていたって云うのはあります。
堀川:そうだよねぇ。
よく「絵コンテをどうしたら早く上げさせられるんですか?」って聞かれるんだよ。俺はね、上がらない絵コンテを、俺が何かしたからといって早く上げさせられたことは無いって答えるんだ。絵コンテがそのタイミングで上がらないと現場はどうなるかって云うシミュレーションはできても。監督や演出には足元の現場の力量に応じた戦術的な絵コンテを上げる制作的な対応力も求められるんだよ。その責任も負っていると思うんだ。その協調性が無いと無自覚に現場を破壊して渡り歩くことになる。でも、それと同時に制作は、そう云う絵コンテを受け取ったら、現場に力が無いがために監督や演出にシフトチェンジを強いてしまったんだと云うことは読み取らなくちゃいけない。どんな過酷な状況でも演出はフィルムにするよ。演出が途中で逃げたって云う話を俺は聞いたことが無い。だけど、自分の力量不足が演出に何を強いたかくらいは理解なくちゃいけないと思うよ。今の自分には監督や演出が求めているものを作る戦力が用意できないんだ、それを言葉にしないまでも悔しいと思ってバネにした方がいい。どうも諦めなのか甘えなのか麻痺しているような気はする。
橘:そうですね。とりあえずスケジュールを間に合わせるために手が早くて仕事が荒い原画マンが投入されても、演出チェックで止まるよって云う制作との攻防はありますね。
堀川:そこに先を見こした戦略があればね、ここで戦力を温存するんだって云うさ、スタッフ間のコンセンサスは取れると思うの。立直しを仕掛けても急には効果が出ないから。転がりだしたTVシリーズでスケジュールを立直せるのはかなり力のあるチームだよ。荒治療だから信頼関係と協調性が必要だしね。
橘:庵野秀明さんが監督する回がそうで、ナディアだと南の島編とか、エヴァでもダイアログだけで進めるところがありますね。ラストに向けて体力を温存するために現場の体力を計算して作っているって云うのはある意味凄いなと思いますね。
堀川:うーん、庵野さんの場合はスケジュールを食いつぶすのも庵野さん、トリッキーな演出で乗り切るのも庵野さん(笑)。
橘:(笑)
堀川:全てが潤沢でスマートに進む現場なんて無いよ。演出も制作も品質と全体のスケジュール管理を負わなきゃいけないセクションなので、決められたスケジュールで処理しなければいけない物量だって頭では理解できる。それをただ演出に業務だから宜しくって言うのでは無くて、人対人なのでね、相手に自分の作品作りの姿勢がどう伝わるかだと思うよ、言葉ではなくね。演出と制作が対立していては絶対にいいものは出来ない。制作が仕掛けていることが見えているのも、全体を通して見ている演出だと思うよ。

   
   
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