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  No.07「愛を込めて描いてくれる人」

「絵コンテの段階が最高に夢があるんですよ。絵コンテの段階で自分の中で何となく思っているものが最高に理想のフィルムで、もうそこからの現実って云うのは夢の劣化でしか無いから、フィルムは、演出からすればね」(神山監督語録No.225)

堀川:橘君も絵が達者で描きこまれた絵コンテを描くでしょう、そう云うもの? 絵コンテでイメージしていた以上のものをスタッフがファインプレーで見せてくれたりする喜びもあるだろうし。
橘:そうですね、確かに絵コンテを描きながらイメージしているときが一番楽しい・・・・、イメージが浮かんだときは楽しいんですけどね、思いつかないときは苦痛なだけ(笑)。でもそれはしょうがないと思うんですよね。絵コンテでイメージしているときが一番自分の中ではいいイメージを持っている。ヒッチコックも言ってたじゃないですか、堀川さんに借りた本(「ヒッチコック映画術」トリュフォー)で、自分の映画は構想を思いついたときで完成しているって。
そう云う意味では2nd GIGの1話(再起動)は狙い通りで、そこから更に良くなっていった作品でしたね。ちょうど9課がビルに突入していくあたりで、最後にモトコがビルを飛び降りて茅葺の執務室に行くまでの流れ(*1)なんですけど、あの辺は絵コンテでイメージしていたときよりも映像になったときに「来たっ!」って。あれは本当に1本作り終えて達成感がありましたね。
堀川:ずっとアニメーションの制作環境はまず監督ありきで作り上げていくものだと思っていたんだけど、どうもそうじゃなくて、クオリティーの高い作品を作ろうと思ったら当然監督や演出なんだけれど、僕はまず監督や演出にとって理想の環境を作ることが先だなと思うようになった。現状クオリティーのためにまずは安定した作画チームの確保だと。作画チームの戦力確保が監督がやりたいことに最も制約を課すんだ。1つの作品に専念できるアニメーターのチームを作ろうと思っているのね。さっき話にあったように、アニメーターが描くものにこだわって調べるのも、どれだけその作品とガップリ組んでいるかだよね。そういう環境を目指そうと。監督や演出が「このチームで作品を作りたい」と思えるような環境を作ろうと思うの。その環境が整えば、それが初めから最高の技術集団ではなくても、刺激的な監督や演出と組むことによってポテンシャルはどんどん上がる、相乗効果が生まれるよ。橘君が演出のポジションからこう云う現場で仕事をしたと思う環境は、今の業界の現状でどの部分を強化すればいいって云うのは何かある?
橘:そうですね、やっぱり思うのは、ほんのチョロッと作品に関わるだけではドライな形で作品と付き合って終わっちゃうことが多いじゃないですか。キャラクターに対して思い入れとか愛を込めて描いてくれる人が少ないですね。やる仕事に対してもうちょっと愛情を注いでやってくれたらきっともっと楽しくできるんじゃないかなって気はするんですけど。資料を調べるのもそうですし、このキャラクターならこう云う仕草をするだろうなって云うところまで考えて描けたら最高なんだろうなって思いますけど。そこをコントロールするのが演出になってきちゃうので、例えばバトーだったら、ここでこう云う仕草をするとか、そう云うところで演出が「こんな軽いヤツじゃないな」って修正しちゃうこともあるんですけど。
堀川:でもアニメーターは(実写で言えば)役者だからさ、それを考えるのが一番おもしろくて腕の見せ所じゃないかな。
橘:そうなんですけどね、結局紙芝居的というか、このキャラクターは右から左に走り抜けますと云うだけで終わっちゃったりとか、そう云う原画が多いのでもったいないですよね。腕を下げる芝居でも凄く上手い人ってただ下げるんじゃなくて、掌を返して下げたりとか(動画の)中割参考をいっぱい入れるじゃないですか? そう云うところを描いていて面白いと思わないと難しいのかなという気はしますよね。

(*1)補足説明:見下ろすSWATの姿に茅葺のOFFセリフが被って、執務室の引きの絵に切り替わった瞬間です。ここの開放感が音楽と榊原良子さんのセリフとあいまってとても良い雰囲気になっていました。(解説:橘)

   
   
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