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  No.11「楽できるものなら僕も楽したい(笑)」

堀川:3Dの領域がどんどん増えていくことについてはどう考えているのかな?
橘:3Dの作業が作画の領域を侵食してきたっていうのは、確かにメカもの等は3Dにして助かっているところはあるし効果的だと思うんですよね。レイアウトは一長一短だとは思いますね。3D でレイアウトを出力した場合、演出チェックの時間的な短縮率はやっぱりものすごく大きいですよ。狙ったパースを3Dで出して、あとはもうブラッシュアップすればそのまま原図になるわけで、今まで僕がチクチク手描きで直していた作業がAパートではほとんど出なかったわけですから。ただ、それは攻殻のシステムだから乗っかっていけるけれども、今後他のシリーズで全部そう云うふうになることは無いとは思うんですけれど。
堀川:俺はどんどんそちらに行くと思っているんだけどね。
橘:そうですか。結局3DレイアウトシステムがTVシリーズのインフラに乗っかったときには3D人口がものすごく多くなって、多分手描きアニメーターが食っていけない状態になってしまうのではないかなって気がします。
堀川:レイアウトもそうだけれども、橘君はジュラシックパークやトイストーリーも好きだろうから、フル3Dアニメに対しても全然拒絶反応はないでしょう?
橘:そうですね。
堀川:この先演出が求めているものと上がってくるものがどんどん乖離していくと、3Dの方が演出が求めているもに近づいていくんじゃないかって思うのね。一度モデリングさえ終わってしまえばリターンの早さでは既に勝負はついている。今のように演出がレイアウトを描き起こすことでしかクオリティーを上げられない状態がこの先も続くのだとしたら、演出も疲弊して気持ちが3Dに流れていくんじゃないかと思うんだよね。もうアニメーションの本質である、気の遠くなる作業を厭わずにものを動かす喜び、それは置いといて、ドラマの表現手段と割り切るならば。
橘:まぁ、それはあると思いますね(笑)
堀川:(笑)
橘:確かに絵を1枚1枚描いていくのは地道な労働なので、すごく苦しいって思うこともありますけどね。何でしょう、3Dで作った絵がどうしても手描きには敵わないと前々から言われているじゃないですか? 実験的にOVAでキャラクターまでフル3Dで作ったアニメもありましたけど、やっぱり硬さはどうしても抜けなくて。でも、ピクサーが作っているものって、もう3Dありきで3D用に作ったキャラクターなんです。なんですかね、1つの新たな3Dアニメっていうジャンルで確立していると思うんですよね。だからそれはそれで、手描きのアニメーションも無くなることは無いと思うんですけど。
堀川:演出業務はキャパオーバーであると言われる一番の要因が橘君の言うように描き直す部分だとしたら、それは3Dが手描きの領域を侵食することで軽減されていくんじゃないか、演出はそう考えているのかなと思ったのね。
橘:うーん、確かに楽(笑)、例えば攻殻だと未来的な建物が多いじゃないですか? 自然物はあまりパースを気にしなくていいので描くのは楽ですけど、建物のように直線で構成されたものや窓のように同じパターンが繰り返される造形物は、実は3Dでモデルを作って出したほうが楽だと思いますね。
堀川:そうね。キャラクターは最後まで手描きで残るけれども背景は3Dの割合が増えるかな。
橘:結局手描きで描いたレイアウトも最終的には筆で塗りつぶされて背景として完成するものじゃないですか? 例えば劇場攻殻(GHOST IN THE SHELL)を見たときにも、看板のレイアウトとかものすごく細かい格子をチクチク全部手で描いていたじゃないですか? わっ、スゴイなぁと思ったんですけど、結局あれも最終的に筆塗りで手が加えられるのであれば、ベースは確かに3Dの均等な窓と正しいパースで出した方が楽だと思うんですよね。ビル群のレイアウトを一生懸命手で描くもの凄い労力を、もしキャラクターを動かすことに使えたらって云う考え方もできるので、そうですね、レイアウトに関しては3Dで楽できるのなら僕も楽したい(笑)って云うのが素直なところです。モデリングは作らなければいけないけれど。
堀川:そうなると今の単価のバランスは変わってくると思うけどね。レイアウトの手描き労力を引き下げる分3Dに回されることになる。

   
   
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