Stance Stance Stance
 
  No.10「他の撮影スタッフにどう指示を出すのか」


堀川:「鋼の錬金術師」の制作中に(撮影会社の)T2を覗いたんですよ。撮影監督の福士享さんが1カット1カットバラチェックをしながら、モニターの前に集まっている撮影スタッフに解説していたんですよ。たぶん昔からの撮影会社ではラッシュチェックで社員教育がされていたと思うんですけど、今はどうなんですか? 
田中:攻殻ではカットの打ち合わせのときに、一部ここは見せてくれ、みたいな感じでチェックをしていたり、こちらでサンプルを作ったりと云うやり方になっていますね。
堀川:「鋼の錬金術師」の撮影上がりをみると、どのカットもタイムシートには演出指示の書いて無いひと盛りがされているんですよね。それって非常にセンスなんですよ。うるさく主張しているんじゃなくて、自然に上手くひと盛されているなぁと思いました。
田中:福士さんと以前飲んで話をしたんですけど、そのときに「全部自分で見るんじゃなくて任せるんだよ」、そう言っていましたけどね。任せるって、じゃあどうやってコントロールするんだろうって当時は思ったんです(笑)。僕は撮影会社で叩き上げられた人間ではないので、以前在籍していた会社でずっと一人で撮影をやっていたんです。その会社の中で、デジタルで何ができるかなって云うスタンスで仕事をしていたんですよ。ですので、撮影として他の撮影スタッフにどう指示を出すのかって云うことに関しては、全くノウハウが無かったんですよ。演出さんに言われたやり方でしか指示が出せなかったんです。最初は撮影に対する指示は完璧でなくてはいけないと考えていました。じゃあどう撮ってもそうにしかならないようなサンプルを作ろうと思って、攻殻ではサンプルをアフターエフェクツで一旦組んで、この通りに撮ってくださいって渡しました。まぁ、これじゃあ当然渡されたスタッフは面白くないだろうなとは思いつつも。要するに、ニュアンスや、概要を口頭で話しても、受け取る側にやる気が無いとやってくれない場合があるんですよ。言われていないし、分からないと。
堀川:どう相手を触発するかって云うのは、たぶん教育の部分だと思うんです。すぐにソフトを使いこなせるようになるけれど、撮影でありながら写真を見ない、映画を見ないって云うと、映像に対する共通言語を持てないなぁと思って。この映像を見れば明らかにおかしいだろうと気づけないのは、感性なのか、いいものをいっぱい見ればなんとかなるのかどうか。もっと光を意識してデジカメで撮ってみたらどう? とか、そんなことすら言えばいいのか。でも本来なら・・・
田中:(笑)そう思うんですけど、私はまだ始めて13年くらいですけれど、やっぱりいろんな人間が入ってきて、いろんな人間が辞めていくのを見ているんですよね。考えてみると、毎年来て毎年辞めていく中に、そう云う仕事にカッチリはまる人間が現れるのを待つしかないと僕は思っているんですよ。
堀川:(笑)なるほど。

   
   
Copyright (C) 2004 PA works Corporation. All Rights Reserved