P.A.Press
2005.10.22

No.1 丁寧に仕上げることとスピードの両立

動画スタッフ:時間がかかっているのに枚数がいかないんです。ちょっと無駄に丁寧にやりすぎているところもあるのか・・・短時間でたくさん出来るようにやらないといけないと思うんですけど。

動画スタッフ:手が遅いんですが失敗を恐れる傾向があるので、飛ばすとリテークになるし、リテークを出したくないと思いながらやるとやっぱり・・・速さと質の境界線をつかめていないんです。

吉原:丁寧にやって無駄なことは何ひとつ無いので、丁寧であればあるほどいい。当然それは商品なので。原画って云うのはそれだけで商品にならないのね。動画って云うセクションを通らない限り物にならないわけなんだけど、動画は仕上げにまわすためのフィニッシュワークなので、それ自体で完結していなきゃならないから、丁寧であればあるほどいい。ただ、それをやるために時間は当然かかる。で、それを両立していくための工夫をしていくのがプロだな。時間をかければ丁寧にやれるって云うのは誰でもそうだから。
 丁寧である、間違いが無いって云う探求も必要なんだよね。そのかわり、そっちは完璧だ、間違いが無いっていうくらい。この人にこの動画を任せたいっていうくらいの完璧さだったらそれは武器になる。なんでも突出したものっていうのは結構武器になるんだよね。それには何かが生まれてさ、凄くいい上りなのでここをやらせたいとかさ、そういうものが生まれる可能性もある。だから丁寧すぎることが無駄になることは無いと思うよ。多分ね、まだフィニッシュワークで、それはここまでじゃないと出せないっていうものが何かあるからなんだよ。それは悪いことじゃない。
確かにリテークが返ってきてたんじゃ意味が無いんだけど、ここまで端折っても通用する上りってあるでしょ? たぶんそう云うのはまだ全然見えないと思うんだけど、それは試してみないと見えてこないよ。1回リテークを貰うのも手だね。1回リテークを貰うためにスピードを上げてみれば? 極端なことを言っちゃうと。リテークが今まで無いって言うんだったらさ。一応丁寧にきちっと上げられているってことだろうから。今までの倍のスピードで飛ばしてやってみて、リテークもらって怒られてもいいよ。怒られるし多少信用も無くすけど、まぁ、3倍頑張ればすぐ回復するから。今のうちだよ。『あ、このスピードでやると、こう云うリテークは出るんだ』、つまりそこは自分が時間をかけなきゃならない場所だってわかるよ。リテークを貰ってもこれくらいだったらすぐ直せるって云うカットがあるじゃない。1カットでもいいから試してみれば? 早く上げるって云うことの体感は出来るよ。
もし動画マンが二人いて、同じくらい丁寧な上りなら、どちらのクリエーター選ぶかって言ったら枚数だ。スピードに勝るものはないんだよ。そいつは君よりクオリティーが少し落ちるヤツだったとしよう。でも君の3倍枚数をやっていたら、これはかなりの勝負だな。ちなみに俺は動画時代に他人の上りの方が全然良く見えたよ、やっぱり。ただ勝ってるところが明らかにあったんだよ。枚数。

動画スタッフ:どれくらいの枚数を?

吉原:1000枚。まぁ、時代が違うからだよ。今の作品だったら700、800やるようなものかな。そのかわりすごく時間を使った。1日のほとんどが仕事だった。あんまり苦痛じゃなかったけど、寝には帰ったけど、同期のヤツよりは全然仕事をやっていた。同期のヤツが「今日は帰るわ」って言ったら、「俺も帰るよ」って言って、そこから3時間くらい使った。同期のヤツは俺は早いって思っていたかもしれないけど、実はすごく時間を使ったんだよ。

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