P.A.Press
2005.10.28

第4回 攻殻機動隊S.A.Cスタッフインタビュー/Stance Stance Stance「輝くシーンを1つずつ」 古川尚哉(レイアウト作画監督)

「最後まで手をつけておきたいな」

堀川:今でもコントロールしたいものは作画で、アニメートでって云うことなの?

古川:たぶん演出は、なかなか性格的にも難しいところがあるので。例えば絵コンテを書いて人に渡すじゃないですか? そこでやっぱり自分の思ったようにならないと寂しかったり。想像していたものと違ったものが上がってきて、それが良くなって上がってくるものだったら自分も嬉しいけど、ヤッターとか(笑)。レイアウトもそう云うもので、自分がラフで描いたものを上手い原画マンだとそれこそ、俺の拙いレイアウトをここまでしてくれた、ありがたいと思うけど、そうじゃないとガッカリもするし。だから絵コンテとかね、そう云う作業はなかなか難しくて、やっぱり最後まで手をつけておきたいなって思うから(笑)。そう云う意味では、レイアウトが天職だとかそう云うことじゃなくて、色々さまよっていくうちにレイアウトになってしまったなって云うことかな(笑)。

堀川:ここなのかなって、居心地の良さが。

古川:うん、居心地の良さですね。ここが一番いいって言っているわけではなくて。

堀川:演出や監督になると、人とコミュニケーションをとりながら、説得しながらまとめ上げて進めていかなければいけない労力があるけれど、今のポジションであれば描いたもの勝負でコントロールできるものがあるからね。

堀川:BeeTrainの「ポポロクロイス物語」の原画を描いていた頃には、ノリノリで暴れているなと思って見ていたけどね。

古川:ポポロクロイスはやっぱり描きやすかった(笑)。

堀川:線が少なかった?

古川:うん、あれくらいの線で全然お話は作れるはずだから。

堀川:アニメートの部分では、ああいうシンプルなデザインで動かす方が好きだと。

古川:そうですね。具体的に描けるカット数も増えてくるだろうし。

堀川:数をやりたいと云うモチベーションはかなりあるの?

古川:ありますよ、そりゃあ!!

堀川:半パートのレイアウトを切らせてくれ、とか?

古川:できるものなら切りたいですよ。ただやっぱり手描きでレイアウトを切っていると、なかなかそうもいかないと云うか、プレッシャーと云うか、今回特に劇場クオリティーを意識して、それなりのものを上げるつもりで、これでいいかと思って出すときにも最後まで後ろ髪を引かれるって云うか。

「おっ、こうなるか! 何故こうなるんだ!?」

堀川:今回の3Dレイアウト出力についてはどう?

古川:上がってきたものをチェックして、そこでリテークを出すなり、と言っても、リテークを出すためにはまず何かこうしたいって云うものを描かなきゃいけないので、結局描いちゃった云うことが多い。できるなら3D出力の元になる手描きのラフがあった方がよかったかなって、うん。でもどうなんだろう、3Dレイアウトってやっぱり手描きとは違う味と云うか、手描きだと手垢のついたじゃないけれど、大体こう云うときはこんな感じみたいな、パースにしてもレンズにしても手馴れたものになってきちゃうんだけど、3Dにすると、「おっ、こうなるか!」みたいなものが上がってくるときがあって、「何故こうなんだ!?」って思うときがある(笑)。それがもしかしたら逆に3Dの味になっていたかもしれないんですけど。手描きとはまた違う独特の、何かこう・・・手描きだとやっぱり感情が入ったり、目で捉えたものになる。3Dだとフレームで出力されてくるからかもしれないけれど、わりとドライな感じのものになる。パースを手で描くときは、極端に斜めの線は画面に入れないとか、ある程度構図を安定させるための、生理的に落ち着く部分って云うものがあるんだけど、3Dはあまりそう云う感覚じゃなくて、理屈でこうなったって云うものが出力されてくるから、それがもしかしたら良かったのか、そうでもないのかって云うのがやってみないと判らなかった部分。今回はある程度直してしまう部分が多かったけど。

堀川:それを直してもらうのは全然。中村悟さんが、「古川君の直したレイアウトは見せたいものが3Dで出力されたものより圧倒的にはっきりしている」と、そのカットの演出意図としてね。

古川:ああ。

堀川:それがアニメーターが原画を描く魅力の半分じゃないかって云う話をね。攻殻で求められるようなレイアウトを手描きで描ける人がいっぱいいればいいけれど・・・。理屈としてはこうなりますと云う3D出力の下敷きがあるじゃない? それを修正するか、真っ白い紙からそれを起こすかでは全然効率は違うと思ったの。

古川:ただ、どうなんだろう、もちろんレイアウトを新人に教えるのも大切だけど、結構窮屈な部分も大きいから、新人は伸び伸びと好きなことをまずやらせて、そこから自分の方向性を見つけていった方がいいのかなぁと思いつつ、でも、そんな悠長に(笑)、新人に好き勝手やらせている状況でもないのかもしれないけれど。

堀川:新人の原画マンには、攻殻はハードルが高いから、もっと伸び伸びとできる作品で数をやって色々試せばいいのでね。攻殻にはそれを求められないからね。

古川:最初にレイアウトの面白さが解ってきたのは、ちょうどデジカメが出始めたころだったので、デジカメで覗きだしてからですかね。空間をこう切り取って、こうなって、レンズの焦点距離によって画角が違ってこうなるって云うのがある程度解ってくると、理屈と云うか感覚と同時に解ってくるから、そこからレイアウトでこう描きたいときはこうするのかって解るようになってくるんだけど、普通に目で見て漠然と空間を捉えているだけではレイアウトにはならないから。まぁ、デジカメをみんなにもたせるのは大事なことって云うか(笑)。

堀川:けっこうアニメーターはみんな持っているよね。

古川:携帯じゃだめですよ。

堀川:P.A.の新人がレイアウトのとり方が分からないって吉原(正行)に質問したときに、「レイアウトを取るなら、まずフレームを描かなきゃ構図なんて決まらないよ」って教えたことがあるの。

古川:そうですね。ガイナックスでもまず黒枠から始めた。

「消失点じゃねぇ!」

堀川:先ほどの話、最初に手描きのラフを元に3Dで構図を決めるのは、今回3Dレイアウトを導入した目的の、レイアウト作業の効率化にはあまり繋がらないと思う。たとえラフでも、その構図を決めるのに一番時間がかかるからね。カメラに興味があっていつもファンダーを覗いていたり、構図に興味がある人でないと、描いたレイアウトのどこが破綻しているかって云うことに気づけないんだろうか。そう云うレイアウトが上がってくるっていうことは。

古川:そうですね、確かにレイアウトを見ているときに「画面の外に消失点があるときにはどうするんですか?」 とか。「消失点じゃねぇ! 目でだいたいわかるだろう」と(笑)。

堀川:そんなものは感覚で描けるだろうと。

古川:と、言いつつ、俺も攻殻の場合は一生懸命紙を貼り足して消失点を取っているけど(笑)。そうしないと、あの線の量の場合どうしようもならないですからね。

堀川:構図を勉強しようと思ったら、最初はアイレベルとか消失点とは何かと云うところから新人は入るもの?

古川:今はなんだかんだ言ってもみんな机を見ればパースの本なんかを持っているじゃないですか。でも、消失点とアイレベルでたぶん勉強は終わっちゃうんじゃないかな。とりあえず消失点とアイレベルさえ取っておけば、それでいいのかって云うふうになるけど、たぶんそこで初めてレンズを持って、消失点がこの画面の一番端にあるときには、どう云うことかって言ったら、カメラが相当アオっていることだって云うことがだんだん解ってくるんだけど、解らないで描いていると、非常に不自然と云うか、見た目じゃないレイアウトになっちゃうから。どうなんだろうな、いいことかは分からないけど、1回それをカメラで撮って見るのも手なのかもしれないけれど、それをやりだすと俺みたいにとりあえず何でもかんでも撮って見なきゃ収まらなくなっちゃうから(笑)。

堀川:P.A.の新人も原画になりたての頃アイレベルや消失点で苦しんでいたの。会社にパリの写真集があったので、それをスキャンで取り込んで、写真の消失点とアイレベルを線を引いて割り出させたんだよ。ヨーロッパの町並みは起伏があって面白いからね。100枚も線を引いてみれば誰だってアイレベルと消失点の理屈はわかるからさ。でも、アイレベルがそんなに低かったら駐車している車の屋根がなぜ俯瞰だんだよ? って云うところに線が引かれていたりもする。

古川:はぁ。

「日本のアニメのお終い」

堀川:今後はね、ますます3D出力のレイアウトが増えてくると思うんだけど。

古川:メカを3Dにしたことは大きいですよ、本当。描けないですよ、タチコマなんか手描きで。

堀川:動かせないしね。

古川:(3Dのモーション)あれを見ちゃうと。

堀川:うん、今後どんどん3Dが手描きアニメーターの領域を侵食するじゃない?

古川:そうするとやっぱり、メカがこんなに描けなくなるみたいに・・・

堀川:レイアウトが描けなくなっちゃう?

古川:描けなくなるのかなぁ・・・でも、3Dでパースに関してはとりあえず理屈上は正しいものが出力されてくるから、もしかしたら、そこから理屈では正しいパースを目で覚えていくようになるかもしれない。手描きでいくら描いても、立体をどう見て、それを額縁の中に入れるかって云うのはなかなか身に付かなかったりするものだから。3Dでやるって云うのもいいこと。その場合は3Dで出力するときも、本当に慎重にポイントを選んで出力しないと、イマイチ意図が解らないものになりがちだから、そこですよね。3Dもある程度絵を描くくらいの感覚で出力しないと難しいなぁと。

堀川:うん、構図を決めるのは単にオペレーターじゃだめだって云うこと。

古川:イマイチよく解らないものがあったから。ソフトを自由自在に操れるものなら自分でやってみたいとも思ったけど(笑)

堀川:そう云う人は出てくるよね。例えばタブレットを使ってPC上で原画を描くようになったら、3Dの背景データを取り込んでレイアウトを切りたいって云う要望は出てくると思うよ、すぐ。そう云う流れに対しての危機感はないんだ? 逆に3Dでこう云うことがもっとできればいいのに、とか。

古川:うーん、完全に今は分業制だから、正直言えば出力するときに立ち会いたかったなと云うのがある。それと、メカの3Dもそうだけど、手描きにさえしちゃえば全部なじむと思うんですよね、3Dだろうが何だろうが。キャラまで全部3Dにしちゃうと3Dアニメになっちゃうけど、例えばメカを全部3Dで出力しても、手描きにすれば普通の手描きアニメに見えちゃうから不思議というか。

堀川:でも・・・それは制作側の体裁だけの不毛な作業じゃないかな。

古川:手描きじゃなくなっていくと日本のアニメはもしかしたらお終いなのかと。

堀川:今TVシリーズでもレイアウト期間ですごく時間をとられちゃって原画スケジュールを圧迫しているの。さっきの古川君の話、TVシリーズでは作監もレイアウトと原画、両方の修正を担うのはしんどい。背景スケジュールも確保できない。レイアウトの負担を軽くして作画と背景スケジュールを確保して、そのぶん動かすって云う方向に向かえば、まだ日本の手描きアニメーションも存続できるかなと思うんだけどね。

古川:3Dでレイアウトを切れる専門家が育てばいいのか。そういう職種が将来出てくるのか。

堀川:それこそ求めるもの?

古川:やりたいけど、いや、手で描くのがもちろん好きだから。

堀川:その下敷きが効率よく作れたらね。

古川:いいですけどね。そう思うことはありますけどね。

「考えません? 今自分が子供で、」

堀川:それが出来ればもっと作品全体をコントロールできる割合が多くなるからね。

古川:そればかりじゃ・・・それはそれで面白くなくなっちゃいますけど。

堀川:僕はそれが主流になりそうな気がするなぁ。

古川:どうなんですかねぇ。あんまり作画が立派過ぎるアニメもなんか・・・70年代のアニメを見ていた世代としてはとっつきにくいと云うか(笑)。マンガの延長として見られる世界と、完全に完成された世界とではやっぱり入り込み方が違うような気がするんだけどな。昔のアニメとか見ないですか、今? 中学校のお子さんが?

堀川:見てないねぇ。

古川:見ていないですか。あれを見てどう思うか、それとも全然興味がないのか。

堀川:子供には古さとか作画の質は全然関係ないよ。内容が全て。

古川:たまたま「天才バカボン」の一番最初のシリーズを見たけど、あまり古さを感じなかった。もっと色褪せているかなと思ったけど全然って云うか、芝山努さんだからムチャクチャ絵は上手いし、色もそんなに褪せていなくて、線はビシビシ決まっているから、昔のアニメを見ても全然入っていけると思うんだけどなぁ。どうなんだろう、今のCGを取り込んでいるアニメよりは入り込み易いような気はするんだけどなぁ。子供が見ていたら是非感想を聞きたかった。今のアニメしか見ていないんだったら逆にかわいそうだな。「宇宙戦艦ヤマト」を見直したけど、今1話を見てもゾクゾクする。僕は小学校で見た世代だけど、あれを中学生が見たらゾクゾクしないものか。1話の、あそこまで絶望的なところから始まるアニメって凄かったですけどね。テンポは今より遅いところはあるのかもしれなけど。それを今の子供達が見てどう思うか非常に心配で。日本は特にそう云う古典とかを丁寧に扱わないと云うか新しいものしか見ていかないから、70年代の貴重なアニメの財産を子供たちが見ないで育つのだとしたら、それで将来できるアニメは面白いのかなと思っちゃうし。

堀川:面白い考えだね。

古川:考えません? 今自分が子供で、今何を見ていたらどうなったかな、とか。

堀川:俺も子供のころにアニメをそんなに見なかったからなぁ。一番見たアニメはたぶんトムとジェリー。あれは小学生の俺に、アメリカの中流家庭に対する憧れと、巨大なクリスマスツリー=幸福と云うイメージを植えつけたと思うよ。

古川:それは変わった(笑)。どう云う経歴なんですか?

堀川:どうしてもアニメーションがやりたかったわけではなくて、実写でも演劇でも裏方ででも作れればよかったんだけど、3つの中ではアニメーションの制作が一番何とか食っていけそうだったから。「夢は食えなきゃ見続けられない」って言う兄貴の助言に従った。

古川:えーっ! まぁ、今まで食べられたんだから・・・

堀川:80年代はほとんど見ていない。部活ばかりやっていた。

古川:その頃からアニメがオタク的なものに見られ始めてきた時代だったから、その前かなやっぱり。

堀川:もちろん小学生のころ名作劇場は見てた。カルピスのCMが好きだった。「粉雪ほっ♪」とか「ルフルンルフルン雪ウサギ♪」とか。

古川:「アルプスの少女ハイジ」は今見るとなかなか複雑で、一旦フランクフルトへ行って戻ってくるところまでは大人の目線で見られるんだけど、最後のクララが立つあたりは見ていられなくなって(笑)。あまりにもハッピーすぎて。原作では爺さんは昔人を殺して散々悪さをして、心を閉ざして山に閉じ篭っていたのが、ハイジの心に触れて少しずつ心を開いて最後には村に降りてくると云うような話ではあるんだけど、アニメの最後の方は、「母をたずねて三千里」の準備で忙しかったのか、急におじいさんが名医になって神様みたいになっちゃうんですよね。これはハッピーすぎて、完璧すぎて見ていられなかった。昔のタツノコの「みなしごハッチ」とか、「けろっこデメタン」とか、暗い路線は駄目だったな、俺。

堀川:ハッチは見てた。あれで俺にとってスズメバチとカマキリは悪い奴になったんだ。俺、すぐに主人公に同化しちゃうんでね。

「描けねぇー!!」

堀川:今回のインタビューの一つの目的として、攻殻SSSの参加目的を一人ひとりが考えるきっかけになればいいかな、と云うのがあったのね。決起集会で語ったこともそうだけど、今回の目標は何かある?

古川:うーん、今までと同じ流れなんじゃないかなぁ。アニメとして見られる実写みたいなものなのかな。違うかもしれないけど。

堀川:その中での自分の立ち位置と云うのかな、自分は目標に何でアプローチしようと?

古川:レイアウトを切ること(笑)

堀川:レイアウトを切ること。

古川:それが出来たら一番いいですけど。

堀川:今はAパートのアバンだよね? その後の担当は決まってる?

古川:Cパートのビル街の狙撃シーンのレイアウトを振られているけど。

堀川:是非やってほしいね。

古川:やりたいことはやりたいんですよ。描けるものなら本当に描きたいですよ俺だって。描けねぇー!! って(笑)。

堀川:内容は濃いしね、あれを描ける人は限られるし、物量はあるし、そこで古川君が参加してくれるんだったら。できるだけレイアウトをいっぱい切ってクオリティーアップに貢献すると云うことか。目標はどれくらいの数?

古川:うーん、言った方がカッコイイんだろうけど全然数字では・・・

堀川:Aパートはどれくらい?

古川:一応アバンは全部見たから64、5かなぁ。3Dレイアウトをそのまま出したものもあるけれど、何だかんだ言ってあっちこっち直してしまったから。最初の頃はまだラフで、後藤さんもいるしキャラは3Dモデリングの人形のままでいいやと思っていたけど、描いていくうちにやっぱりキャラを描いてみないとレイアウトの収まりが判らない、と、言いつつ描いていると段々色気が出てきて、後半になればなるほど作業量がグタグタになっていると云うか、これもやってあれもやってってなっていっちゃって。

堀川:大変なシーンばかりだから目標は150カットだね。いや、150は厳しいかなぁ。Cパートの後Dパートに入って・・・

古川:単純にどうだろう、どこまで妥協していいのかがちょっと判らないですからね。ビルなんて描き込もうと思えば神様のように描き込めるし、そんなに描きこむよりも、画面にあまり反映されていない部分だったらもっと割り切ったレイアウトで数を上げたほうがいいっていうのもあるし。

堀川:そのへんはTVシリーズのレイアウトで古川君が指針を示したよね。キーショットのレイアウトは描き込んでおいて、あとはザックリと描く。美術でキーショットに合わせて描き込んで下さいと云うやり方で。

古川:そうなんですか?

堀川:えっ? 意識していたわけではないんだ。

古川:意識していないです。

堀川:そうなんだ(笑)。ビル街なんて特にそうだと思うけどね。

古川:1カット1カット作業をしているときは、それはそれで楽しいんだけど。

堀川:なるほど。是非力になってもらえれば。Cパートもなかなかあの内容を描けるアニメーターに振り切るのは大変なので。

古川:確かにレイアウトを見ても、新人かな?って思う人もいるけれど、新人に攻殻は大変なんじゃないかな。いきなり攻殻はしんどいんじゃないかな。なので、全部ラフでも枚数はとりあえずレイアウトで入れておこうかなとか。

「それは1つのチームの勝利になる」

堀川:監督とあまり話をすることが無いじゃないですか?

古川:自分の世界に入っていくタイプなので(笑)

堀川:そうだよね。先日ビックリしたんだよ。9スタに古川君の凄い一人笑いが突然響き渡っているからさ。ガイナックス出身に多いの? 昔、本田雄さんもヘッドホンして大声で歌ってたし。

古川:みんな陽気なんですよ。俺だけだと思いますけど(笑)

堀川:監督に伝えたいことがあれば。シリーズから通してでもいいけどね。どう云うことをやりたいとか。

古川:うーん、何だろうな、寧ろこれでいいですか?って感じだけど。面と向かって「どうッスカネ?」なんて聞けないじゃないですか。でも、ダメなところを指摘されても、「それは俺もわかってますよ」(笑)って云うような感じで、自己完結してしまうほうだから。

堀川:要望は無い?

古川:自分の感覚では好き勝手やっているって云うか、こうしたほうがいいかなと思ったらそうしているから、マズかったかなと落ち込むことも。イケイケになれないもので。そう云うときは勢いで、これでいいやって出しちゃうけど、出したあとで結構悩んでしまったりとか。問題があったら指摘してもらった方が助かりますと云うことかな。

堀川:スタッフに対して。9スタ以外で作業をしているスタッフに対しても。

古川:どうなんだろう。それなりに見られている作品だという意識を持ってやれば、それは1つのチームの勝利になるって云うことなのかなぁ。あとは、攻殻なら普通アニメを見ていない人達にも、こう云う作品をやっているって一応言えるじゃないですか、ちょっと照れたりせず。スタッフには・・・大変なカットが多いから、苦しんでやっている人にそんな・・・何かあるかなぁ。

堀川:(笑)。最後に攻殻ファンに一言下さい。

古川:単純にまた独立した別のストーリーだから、それを見るのは充分楽しいんじゃないかなと。ストーリー的には劇場版並みの厚みのあるストーリーが、オマケじゃないけれどもう1つ見られるわけだから、新しい攻殻の世界を楽しみにしてください。緊張感のある作品になればいいんですけどね。

堀川:シナリオのテンポが良かったしね。

古川:あとは音楽がいいですからね、何だかんだ言っても。TVシリーズも音楽でかなりリッチに助けられていると云うか、音楽の力は大きいですよ。

堀川:管野よう子さんも今回の脚本を喜んでくれているみたいだから。

堀川:今手持ちは19カットくらい?

古川:数的にはそれくらい。2,3カット除けばラフで一通り終わっているので。カッコ良く見せるために色々考えなきゃいけないんだけど、1,2カットまだ悩んでいるものがあるから。悩めるって云うのはそれだけ色々やりようがあるわけだから、それがレイアウトとか原画の作業の一番面白いところだから・・・時間さえあれば(笑)。

堀川:そのこだわりと物量を大変だけど両立して欲しいよね。Aパートのアバンにせよ、Cパートのシーンにせよ、この作品の中でも絵的な見せ場だからね。そこをどうコントロールするか。けっこうなカット数があるもんね。Cパートは3Dのレイアウト出力も無いシーンだし、年明けから頼りにしています。
今日はどうもありがとうございました。

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