P.A.Press
2005.10.29

第4回 攻殻機動隊S.A.Cスタッフインタビュー/Stance Stance Stance「作品に愛を込める人たちと」 橘 正紀(演出)

「9スタの環境」

堀川:もうちょっと現場のシステム、インフラについて演出にとっての理想は?

橘:そうですね、美術とか撮影とか、作品を作るスタッフが一箇所に集まっている現場なんですよ。

堀川:うーん、そうだよね。

橘:今まさに9スタがそういう環境を作っていて、3D監督と撮影監督と色彩設計さんがいて・・・

堀川:美術監督もいれば

橘:そうですね。何かあったときには全て相談がその場でできる、フットワークの軽さが演出にとっては一番やりやすいんですね。作っている過程でいろいろ出てくる問題をすぐに解決できるところが一番デカイとおもいます。

堀川:監督語録の「インフラを確立すると同時にインハウスでやる以上、イレギュラーでやろうと思ったときに、やれる入口と出口も取っておきたいんですよ。」(神山監督語録No.183)ね。P.A.は段階を踏んで集中投下してもまだ時間がかかるなぁ・・・そうだよねぇ・・・。それに関連することだけれども、スタッフとのコミュニケーションの取り方で気を使っていることって何かある?

橘:そうですね、外のスタッフとは文字でやりとりるすことが多いじゃないですか、原画チェックでも。そう云うときの文章には気を使います。

堀川:顔が見えないとドライな感情として伝わるから注文をつける文章には3倍気を使うね。でも絵ってどうなの?「レイアウトこちらで」って演出から戻ってきたら、原画マンは自分が描いたモノを全否定されたような気分になるものかな?

橘:でもそこは1つ先の追い込みとしてスケジュール的な問題もあるじゃないですか。こここうして下さい、こうして下さいってリテークで返してスケジュールを食いつぶすこともあるし、結局狙いたい絵が自分で描けるんだったら自分で描いちゃった方が早いって云うところもあってですね、そこも心苦しいところはありますけど、たぶん避けて通れないという気はしますね。何でしょう、上手く描ける人は全修正することは無いじゃないですか。やっぱり何かしら問題を含んでいるところを直さなければいけないわけであって、それは結局ロケーションとして合わせで修正しなければいけないものなのか、もう画面の絵として修正しなければいけないものなのかで直し方は全然変わってきますから、そこでもしそう云う気持ちを汲んでもらえるんだったら、逆にそれを励みに、そこでまた一歩こう頑張るぞって云う気持ちになって欲しいですけど。

堀川:決起集会での発言「TVシリーズ以上のものを仕込んでいきたいので、どんどんスタッフにアプローチしていきたい」、「いろんなアイデアを盛り込んでいきたいので相談したい」と。そう云うことで、今Aパートが佳境で撮影はこれからだとしても、何か意識して取り組んでことはある?

橘:処理では撮影監督の田中(宏侍)さんや3D監督の遠藤(誠)さんには、「こう云うことができますか?」とか、「こう云うことをやるときに素材はいりますか?」って云うのはわりと頻繁に聞いていますね。原画チェック時に画面作りに必要になる材料のこととか、「ああ、それだったらプラグインのコレコレで出来ますよ」とか、「どう云うふうになるんですか?」って聞けばその場で見せてもらえるので、「こう云うふうになるんだったらこれでいきます」ってその場で判断できる。それは非常に心強いですね。

堀川:そうだよね、それはいいね。

「泣かずに済む」

堀川:次にデジタル化が演出処理にもたらしたものについて。演出処理業務自体はデジタル化されていないんだけど。デジタル化は末端セクションから導入されたでしょ? 効果が目に見えて数値に出るセクションだからだね。作画や演出業務はデジタル化から取り残された形になったけれど、他セクションのデジタル化が演出業務にもたらしたものってどんなことかな? 恩恵を受けた部分、煩雑になってさらに大変になった部分でも。

橘:画面作りが劇的に変化しましたよね。フィルムの撮影では出来なかったことがデジタルでできるようになったじゃないですか。フィルムではオプチカル合成(*1)を使わなければ出来なかった部分、今までは絵コンテ段階で絶対に取らなかった正面フォローをやるようになったりとか、3D背景なんて最たるものだし。

堀川:表現できる幅が広くなったね。俺は画面をいくらでも暗く設計できるようになったなと思った。ハレーション(*2)を気にしなくてもいいじゃない? セル傷とか。

橘:(笑)それはありますね。

堀川:昔なら宇宙背景にも青や緑色を使用したでしょ? 真っ黒にするとセル検査や撮影のストレスもすごいからね。

橘:確かにセルゴミはありますね。すっかり忘れていましたけど、V編のときにプチプチ潰していましたね。

堀川:デジタルではそのリテークの心配が無くなって、どんどん画面が暗く設計されていくなと思って。あと、色に対するこだわりね。先日の監督の話、
「コンポジット後に最終追い込みをすると云うことで作っていかないともうだめかも。でも、各セクションのこだわりって云うのは今まで通りあるからね」(神山監督語録No.237)
今までは色彩設計や背景でも色を追い込んでいたんだけれども、今はコンポジットの段階で如何様にも変えられてしまうでしょう? そこに至る制作工程での色の追い込みの有効性がどんどん小さくなっていくのかな? 演出の色に対する追い込みはデジタル化されてからどう?

橘:確かにそれはもっと追い込めるようになったって云うのはありますね。攻殻に関しては美術は本当にスペシャルなものが上がってくるので特に気にならなかったんですけど、セル時代のTVシリーズをやっていたときには、何とかしたいけれどなんともならずに泣いていた部分もデジタルになってからはコンポジット後の調整で泣かずに済むようになった。あとはカットごとに背景の明度を微妙に調整してくる。そう云うところの合わせも実は演出が撮出し時に指示する以上に撮影さんが細かく調整しているんですよね。より演出のイメージに近い絵が作られてくる。そう云う意味でデジタルの恩恵はあります。

(*1)画面上の合成で、撮影ではなく現像所に依頼するもの。撮影は手間、現像は高価、失敗する率も高いので通常のTVシリーズで使うことはまず無かった。

(*2)撮影で使用するライトが乱反射を起こすために画面の一部が光る。特にセルに付いた小さな傷が原因。もちろんリテーク。

「最終段階でブレることは無い」

堀川:10年くらい前だけど、デジタル化が進み出したときに1つ危惧したのは、演出の判断能力が鈍るなと思ったのね。判断を先送りするんじゃないかと。ラボ上がり(フィルム現像)の手間と予算をかけなくて済む分、画面で見ないと判断を下せない演出が増えるだろうなと思ったの。モーションのタイミングでも、色でも、効果でも。TVシリーズの演出は無いスケジュールの中で瞬間瞬間の判断力を必要とするからね。それが何でも映像で見てから判断したいって云う演出が増えるんじゃないかなと思ったんだけど、そのあたりはスケジュールとの折り合いをつけているのかな?

橘:そうですね、コンポジットしてみないと分からないと云う問題は、結局スケジュールとの問題が絡んでくるので制作の判断になってくると思うんですよ。画面の追い込みはあるにせよ、結局背景打ち合わせ、色打ち合わせと云う段階でイメージを固めて方向性を決めて作業を進めているわけじゃないですか? それで、演出は撮出しのときに初めて背景とセルを合わせてチェックしても、その段階では両方の色が合うように作ってきているわけです。だから、どうしても特殊な処理で見せてくれと云うところはありますけど、全部が全部それはできないですよね。個人的に撮出しが苦手と云うこともありますけど(笑)、原画チェックのときにある程度決め込んでおかないと、あとでもう1回チェックするのは実は苦痛だったりするんです。それはもう演出が早い段階でイメージを固めておけば最終的な段階でブレることは無いと思うんですよ。特に攻殻に関しては撮影監督の田中さんが最終的な微調整はやってくれているので、個人的にはコンポジットのところで色の追い込みどうのって云うところまでは考えていないですね。狙いは最初から決まっているじゃないですか、作品を作り始める段階から。結局いろいろ出来るからって云うのに惑わされると狙いがブレてきちゃうので、そう云う方向にはならないと思うんですよね。いくらデジタルは何でもできると言っても演出意図がしっかりあれば、最終的に求めるものは変わらないはずですから。多分そこで色々言ってきちゃうってことは、演出プランが固まっていないってことなんじゃないかなと僕は思うんですけれども。

「楽できるものなら僕も楽したい(笑)」

堀川:3Dの領域がどんどん増えていくことについてはどう考えているのかな?

橘:3Dの作業が作画の領域を侵食してきたっていうのは、確かにメカもの等は3Dにして助かっているところはあるし効果的だと思うんですよね。レイアウトは一長一短だとは思いますね。3D でレイアウトを出力した場合、演出チェックの時間的な短縮率はやっぱりものすごく大きいですよ。狙ったパースを3Dで出して、あとはもうブラッシュアップすればそのまま原図になるわけで、今まで僕がチクチク手描きで直していた作業がAパートではほとんど出なかったわけですから。ただ、それは攻殻のシステムだから乗っかっていけるけれども、今後他のシリーズで全部そう云うふうになることは無いとは思うんですけれど。

堀川:俺はどんどんそちらに行くと思っているんだけどね。

橘:そうですか。結局3DレイアウトシステムがTVシリーズのインフラに乗っかったときには3D人口がものすごく多くなって、多分手描きアニメーターが食っていけない状態になってしまうのではないかなって気がします。

堀川:レイアウトもそうだけれども、橘君はジュラシックパークやトイストーリーも好きだろうから、フル3Dアニメに対しても全然拒絶反応はないでしょう?

橘:そうですね。

堀川:この先演出が求めているものと上がってくるものがどんどん乖離していくと、3Dの方が演出が求めているもに近づいていくんじゃないかって思うのね。一度モデリングさえ終わってしまえばリターンの早さでは既に勝負はついている。今のように演出がレイアウトを描き起こすことでしかクオリティーを上げられない状態がこの先も続くのだとしたら、演出も疲弊して気持ちが3Dに流れていくんじゃないかと思うんだよね。もうアニメーションの本質である、気の遠くなる作業を厭わずにものを動かす喜び、それは置いといて、ドラマの表現手段と割り切るならば。

橘:まぁ、それはあると思いますね(笑)

堀川:(笑)

橘:確かに絵を1枚1枚描いていくのは地道な労働なので、すごく苦しいって思うこともありますけどね。何でしょう、3Dで作った絵がどうしても手描きには敵わないと前々から言われているじゃないですか? 実験的にOVAでキャラクターまでフル3Dで作ったアニメもありましたけど、やっぱり硬さはどうしても抜けなくて。でも、ピクサーが作っているものって、もう3Dありきで3D用に作ったキャラクターなんです。なんですかね、1つの新たな3Dアニメっていうジャンルで確立していると思うんですよね。だからそれはそれで、手描きのアニメーションも無くなることは無いと思うんですけど。

堀川:演出業務はキャパオーバーであると言われる一番の要因が橘君の言うように描き直す部分だとしたら、それは3Dが手描きの領域を侵食することで軽減されていくんじゃないか、演出はそう考えているのかなと思ったのね。

橘:うーん、確かに楽(笑)、例えば攻殻だと未来的な建物が多いじゃないですか? 自然物はあまりパースを気にしなくていいので描くのは楽ですけど、建物のように直線で構成されたものや窓のように同じパターンが繰り返される造形物は、実は3Dでモデルを作って出したほうが楽だと思いますね。

堀川:そうね。キャラクターは最後まで手描きで残るけれども背景は3Dの割合が増えるかな。

橘:結局手描きで描いたレイアウトも最終的には筆で塗りつぶされて背景として完成するものじゃないですか? 例えば劇場攻殻(GHOST IN THE SHELL)を見たときにも、看板のレイアウトとかものすごく細かい格子をチクチク全部手で描いていたじゃないですか? わっ、スゴイなぁと思ったんですけど、結局あれも最終的に筆塗りで手が加えられるのであれば、ベースは確かに3Dの均等な窓と正しいパースで出した方が楽だと思うんですよね。ビル群のレイアウトを一生懸命手で描くもの凄い労力を、もしキャラクターを動かすことに使えたらって云う考え方もできるので、そうですね、レイアウトに関しては3Dで楽できるのなら僕も楽したい(笑)って云うのが素直なところです。モデリングは作らなければいけないけれど。

堀川:そうなると今の単価のバランスは変わってくると思うけどね。レイアウトの手描き労力を引き下げる分3Dに回されることになる。

「そこは効率化されない」

「演出は何としてもデジタルを導入したい」(神山監督語録No.62)

堀川:他のセクションではなく演出業務をデジタル化したい、こう云う部分をデジタル化してくれたら効率化がはかれるんだって云うようなことはある?

橘:演出業務ではないんじゃないですか? 原画までデジタル化してタブレットで描くようなシステムならモーションを再生しながらタイミングを修正できるとは思いますが。原画が描かれた時点でアクションレコーダーに入っているのは便利だとは思いますけど、それでパッパッパッパとチェックしていると、もっと他の大事なところを見落とす気がしますね。演出の作業的な部分で効率化がもし図れるとしたらそこかなっていうくらいですけど、結局演出の仕事はアイデア入をれたりとか芝居考えたりとか、そう云うことじゃないですか。そこは効率化されないですね、それこそ電脳化しないと(笑)。

堀川:絵コンテの絵がカット順に原画に差し替えられたら、再生すればカットを繋ぎでチェックできるし、台詞のタイミングはとりやすいんじゃないかなと思ったんだよね。

橘:台詞のタイミングもタイムシートで1つ1つ打っていかなきゃいけないじゃないですか、口パクも何コマ目は「開き口」、何コマ目は「閉じ口」って全部計算して作っていくものなので・・・、カッティングする流れはイメージしやすいとは思うんですけど、どうでしょうね。多分BOOK分けとか、どこのタイミングで何コマで歩いていて、何コマでアウトする、前のカットの絵はどこまで動いている、そういうデーターが残っていたら、前後カット合わせてチェックはしやすいと思いますけど。

堀川:データーは残せるのでカットを繋げてのチェックは活用できると思うのね。カッティング前にラフカッティングがイメージできちゃうんじゃないかな。

橘:どうですかね、僕の場合ワンカット単位で原画をチェックするときに、一番気にしているのは次カットとの繋ぎが綺麗にいくかって云う編集点を意識しながらチェックしているんですね。ここのタイミングでこう切ったら次のカットにポンと繋ぎやすいなって云うのを考えながらチェックしているので、実は原画チェックの段階で繋がったらどう云う絵になるかをその場で見たいとはあまり思わないです。逆に編集のときに初めて繋げて見て、「ああ、こう云うふうに出来ているんだ」とか、「こうなっちゃうんだ」とか、イメージ通りに行っていれば面白いし、そこで初めて見て手応えを掴んで新鮮な感じを味わうのも実は楽しみなので、原画チェック中は編集で繋げたらどう云うふうになっているかなって云うのを楽しみにしながら苦しい期間を乗り越えているところがあります。そう云う意味ではカット合わせ用のデータをいつでも引っ張り出せるように保存しておく目的以外には、演出業務のデジタル化で効率化されることって思いつかないですかね。まず原画作業がデジタル化されないと演出業務もデジタル化されないから。
堀川:うち、するから。

橘:本当ですか?(笑)

堀川:今年から試験的に5台導入してみる。地方の閉じた環境は導入しやすいと思う。確かに原画や演出は仕上げや撮影ほどの劇的な効率化は望めないね。それは難しいので原画や演出がデジタル化で仕上のように収入が上がることも望めない。作画と3Dとの融合とか、均質な線を引く動画のストレスとか、腱鞘炎とか腰痛とかライトテーブルの眼精疲労などのアニメーターの健康面もいろいろ考えたけど地味な効果が多いね。輸送費、材料費のコストダウンも試算したけれど、先日のミーティングでサーバーのセキュリティーはバカみたいに高価なものだと分かったので怯んだ(笑)。

「画面作りの肝となるもの」

堀川:さて、攻殻スペシャルの話なんですが、決起集会のときにTVシリーズでは追い込めずにやりのこしたところを攻殻SSSではぶつけたいとの発言があったんだけど。

橘:ええ。

堀川:イメージを膨らませるとどんどん大変な処理になってしまうと言って、あの場でみんなの笑顔を引きつらせた。

橘:(笑)

堀川:もう一度自分の目標を再確認してみて、それは現状できているのかな? これからDパートだよね?

橘:たぶんDパートで爆発するんじゃないかな。

堀川:はははははは。

橘:Aパートでも実はまだどう云う処理にしようか悩んでいて、原画を演出で止めているカットもあるんですけど。Aパートは地味だけど大変な処理のカットがものすごく多いので、そう云うところでちょっと苦労はしていますけど色々面白いことは出来そうです。あと、美術設定には光源の指示が無かったので、実は決起集会の日に神山監督と美術監督の竹田(悠介)さんに話をして、そこでライティングボードを作ってもらうことにしたんですね。

堀川:うん。ライティングボードはどんな効果あるの?

橘:あれでレイアウトの段階で光源がはっきりするので、影付けがしやくすくなったって云うのと、画面のイメージを掴むことに関しては格段に違いますね。あれがあるおかげで最終的な絵をイメージしながら画面を作り込めるって云うのはかなり大きいと思います。

堀川:今振り返ってTVシリーズのときに追い込めなかった部分ってどう云うところ?

橘:画面のなじませ方とか、そうですね、やっぱりレイアウト段階で時間に追われて修正が追いつかなかった部分が大きいですね。そう云うところは3Dレイアウト出力のシステムでひとつ解消されているので、あとはチェック時にシーンの繋ぎとか、動きの合わせとかそう云うところをどこまで注意して持っていけるか。画面のなじませ方に関してはライティングボードが上がっているので、そこでイメージを掴んでさらに作り込めます。例えば1つのプランとして、画面のコントラストで緊張感を高める効果を狙うシーンでは、ライティングボードの打ち合わせでライトが無かったところにも光源を置いてもらって、光でカッと照らして緊張感を持たせると云うような仕込みが出来た。かなり早い段階で最終画面のイメージを掴んでプランニングし易かったという意味では、ライティングボードで画面作りの肝となるものを一個手に入れたわけじゃないですか、それが1つTVシリーズではできなかったことで手応えを感じているところです。

「えらいこっちゃ」

堀川:普段監督とコミュニケーションをとる機会も少ないと思うけど、監督に橘君から上げたいことってある?

橘:そうですね、とにかく今処理で必死ですから頑張りますとしか(笑)、なんとか期待にそえるものを作りますと。

堀川:発言が大人しいな(笑)。スタッフに対しては何かある?

橘:なんでしょう、最初に言ったこととプランを変更して負荷をかけてしまうこともあるので、その辺のフォローをしっかりしたいです。あと、ここをもっとこうしたほうがいいんじゃないかって、3Dとか撮影さんとか仕上げさんが色々トライしてくれるんですよ。そう云うところが凄くありがたいなと思いますね。攻殻S.A.Cが今までに1つのチームワークとして作り上げたものってものすごくデカイんですよ。

堀川:経験がリセットされずに生かされているってことね?

橘:そうですね、それがものすごく幸せなことだと思います、現場として。もう3Dも撮影も仕上げに関しても、そのスキルが蓄積してきている部分ですぐに対応できるって云うところで本当に助かっていますね。

堀川:最後にファンに。

橘:もうDパートのことを考えたら(笑)

堀川:(笑)

橘:このまま完成するのかって云う(笑)、とにかくTVのときに出来なかった画面作りをどんどん追い込んでいますから、なんでしょう、凄くいいものが上がると思います。

堀川:Dパートのカット数も当初の予定よりいくよ、大変よ。

橘:大変ですよ、だってこの前の打ち合わせしたのでDパートの前半ですからね。さらにDパートの電脳空間の3Dのカット数も半端じゃないですよ。どう云うふうにもって行こうか悩んでいますけど、いや、きっと完成するころには笑い話になっていますけど(笑)

堀川:(笑)

橘:そうなればいいな、おっかないですね。制作も新人ですからどうしましょうかって聞かれても僕はどうしましょうか(笑)

堀川:それこそ場数を踏んだ演出が先読みして制作的な判断を下さなきゃいけない部分でもあるよね。なんだかんだ言っても橘君が演出の中では一番若いんだから、体調など崩している場合じゃない。

橘:えらいこっちゃ。いやぁ、おかしいですね、崩す予定ではなかったんですけどね。

堀川:あたりまえ(笑)。2ヶ月だもんね。

橘:マイコプラズマ肺炎でした。

堀川:もう治ったの?

橘:治りました。

堀川:では、今までの分も取り戻すつもりで頑張ってください。

橘:頑張ります。

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